2021.07.20 抄読会

Liberal fluid fasting: impact on gastric pH and residual volume in healthy children undergoing general anaesthesia for elective surgery,
A. R. Schmidt et al, British Journal of Anaesthesia. 2018;121(3):647-655

担当:及川先生 / 植田先生

ガイドラインで提案されている小児の術前の清涼飲料水の空腹時間は2時間であるが、しばしばそれを超えてしまう。
脱水、ケトアシドーシス、動脈圧の低下、患者の不快感などを避けるために、術前の空腹時間を短くすることが提案されている。
本研究の目的は、前投薬まで自由に清涼飲料水を摂取することで、実際の空腹時間が大幅に短縮され、胃内のpHと残量に影響を与えるかどうかを調査することである。

全身麻酔による選択的手術を受ける小児(1〜16歳,ASA -PS 1または2)を対象に,ミダゾラムによる前投薬が行われるまで清涼飲料水を摂取する方法(自由飲水群)と,2時間の水分絶食を行う方法(標準飲水群)に無作為に割り付けた。実際の絶食時間を記録した。気管挿管後、胃内容物を胃管で採取し、そのpHと胃残量を測定した。データは中央値[四分位範囲]で示した。
1〜16歳の子ども162名を対象とし、138名の胃のpHを測定した。患者の特徴は2つのグループで類似していた。自由飲水群では,空腹時間が有意に短かった(48 [18.5-77.5] vs 234 [223.5-458.5] 分,P<0.001)。胃のpH(1.6 [1.5-1.8] vs 1.6 [1.4-1.7];P=0.237)および胃残量(0.38 [0.1-1.1] vs 0.43 [0.13-0.73] ml/kg;P=0.535)については,有意な差は認められなかった。胃残量が2ml /kg以上であったのが自由飲水群(空腹時間の中央値32分)では12名(15%)に対し、標準飲水群では1名(1%)であった。(P=0.001)
前投薬までの水分摂取により、空腹時間を大幅に短縮できる。胃残量の上昇は、空腹時間が30分以下の患者に多く見られる。

手術前2時間以内であっても数口であれば飲水を許可してもよいのではないかという議論もありましたが、やはり術中の嘔吐のリスクは考えておく必要がありますね。
及川先生、ありがとうございました。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 栁

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療