かめだPOST 頭頸部腫瘍の治療

「頭頸部」というのは鎖骨から上で頭の中、眼および頸椎を除く領域全体を示しますが、下図のように頭頸部は多くの部位に分かれています。この頭頸部にできた腫瘍を「頭頸部腫瘍」と言います。腫瘍は悪性と良性に分かれますが、悪性のものを「がん」と言います。従って、頭頸部の悪性腫瘍を総称して「頭頸部がん」と言いますが、部位別には、喉頭がん、咽頭がん(上・中・下に分かれます)、舌がんをはじめとする口腔がん、鼻副鼻腔がん、さらに甲状腺がん、唾液腺(耳下腺)がんなどが主なものです。
具体的な頭頸部がんの説明は「日本頭頸部癌学会」のホームページに「頭頸部がん情報」として掲載されていますので参考にして下さい。

一般的にこれらのがんに対して、早期であれば小範囲の切除や放射線治療が可能であり治癒率も良好で術後の障害もわずかです。一方、進行した頭頸部がんの場合には重要な器官を含めた大きな切除が必要となります。しかしこの頭頸部領域は、呼吸、食物摂取といった生命維持に欠かせない機能や、会話や聞く・見るといったコミュニケーションに関する機能があり、また外部にさらされる場所でもあります。そのため、大きな切除を行えば声を失ったり食事が摂れなくなったり眼を失ったりといった重大な機能障害が生じたり、外見的にも変形や傷跡が目立ち手術後のQOL(クオリティ オブ ライフ:生活の質)は大きく損なわれます。もちろん治癒率も芳しくありません。このような問題を防ぐためにはいくつかの大切なポイントがあります。

最初は患者さま側のポイントです。

がんにならないようにする

頭頸部がんの多くは喫煙・大量飲酒が関係しています。特に喉頭がんは肺がん以上に喫煙との因果関係が強いと言われています。最近増加傾向にある下咽頭がんは大酒飲みの人に多く発症します。禁煙してお酒も適度の量にとどめることは頭頸部がんを予防するのには欠かせません。現在、日本頭頸部癌学会では本年の学会で禁煙・節酒宣言を行っています。

http://www.jshnc.umin.ne.jp/psmd.html 参照

早期にがんを発見する

頭頸部がんの初期症状はざまざまですが、その様な症状に気づき頭頸部外科や耳鼻咽喉科で早期のがんを発見してもらえれば、大きな手術を避けQOLの低下を防ぐことが出来ます。初期の症状としては声のかすれ(喉頭がん)、のどの違和感や飲み込みにくい感じ(咽頭がん)、治りにくい口内炎(口腔がん)、首のグリグリなどです。これらの点に気づいたら一刻も早く上記の診療科を訪れましょう。

次は治療上のポイントです。

機能温存手術や再建術を工夫する

機能をできるだけ温存する切除法や、機能や形態の障害をできるだけ回復させる再建手術を工夫することです。現在その様な手術法が日進月歩の早さで開発されつつあります。

大手術の代わりとなる治療法を開発する

最近では大手術を回避するために、放射線のかけ方の工夫、放射線と抗がん剤の同時併用、大量の抗がん剤を直接患部に向かう動脈に注入といった様々な治療法が取り入れられてきています。
これまでせっかく治っても機能や容貌の著しい障害のためつらい思いをしなければならなかった頭頸部がんの患者さまが、患者さまの日常生活での節制、がんの早期発見さらに治療法の開発によって、治療後もQOLの維持された快適な毎日を送っていただけるよう願って、毎日の診療に励んでいます。

監修者
亀田京橋クリニック
院長 / 耳鼻咽喉・頭頸部外科 顧問 岸本 誠司

【専門分野】
頭頸部外科、甲状腺外科、頭蓋底外科、気管食道科

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