脳卒中や心筋梗塞の原因となる高血圧を、食事・運動・お薬に加え、カテーテルによる腎デナベーション治療(腎交感神経除神経術)でサポートします。
- 続けやすい生活プランを一緒につくる
- お薬を使っても血圧が下がりにくい方には、腎デナベーションの適応を検討
- 心臓・腎臓・血管などの合併症を横断的に評価
- 治療の基本は生活習慣の見直しです。腎デナベーションはすべての方が対象ではなく、診察で適応を判断します。
- 内容は一般的な説明です。診断・治療は診察結果によって異なります。
高血圧ってどんな病気?
血管の壁にかかる圧力がずっと高い状態が続く病気です。日本では約4,300万人(3人に1人)がかかっています。ほとんど自覚症状がないまま血管や臓器にダメージを与えるため、「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれます。
放っておくと、脳卒中・心筋梗塞・心不全・腎不全など命にかかわる病気のリスクが高まります。まずは自分の血圧を知ることが大切です。
血圧の基準と目標(JSH2025)
2025年8月に発表された最新ガイドライン(JSH2025)のポイントをまとめます。
高血圧の診断基準(変更なし)
| 測り方 | 上の血圧 | 下の血圧 |
|---|---|---|
| 病院で | 140以上 | 90以上 |
| おうちで | 135以上 | 85以上 |
治療の目標値(ここが大きく変わりました)
これまで年齢や持病で違っていた目標が、原則すべての方で統一されました。
| 測り方 | 目標値 |
|---|---|
| 病院で | 130/80 mmHg 未満 |
| おうちで | 125/75 mmHg 未満 |
- めまい・ふらつき・腎機能の低下・フレイル(虚弱)傾向がある方は、個別に調整します。
おうちで測る血圧がますます大切に
- 朝と夜、上腕式の血圧計で毎日測定し、記録をつけましょう。
- 「白衣高血圧(病院だけ高い)」や「仮面高血圧(おうちだけ高い)」を見逃さないために家庭血圧が欠かせません。
- JSH2025では、減塩だけでなくカリウム(野菜・果物・海藻など)を積極的にとることも推奨されています。
治療の全体像
- 生活習慣の見直し — 減塩(1日6g未満)、体重管理、有酸素運動、禁煙、節酒、良質な睡眠
- お薬 — カルシウム拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬などをお一人ずつに合わせて選択
- 腎デナベーション — 上記で十分に下がらない方に検討するカテーテル治療
カテーテルで血圧を下げる「腎デナベーション」
腎デナベーションとは
腎デナベーション(RDN:Renal Denervation)は、カテーテルという細い管を血管の中に通して、腎臓まわりの交感神経のはたらきを穏やかにし、血圧を下げる治療法です。狭心症や心筋梗塞の治療で広く使われているカテーテル治療と同じしくみを応用しており、外科手術に比べて体への負担が小さいのが特長です。
なぜ腎臓の神経に注目するの?
腎臓は「おしっこをつくる臓器」というイメージが強いかもしれませんが、実は血圧の調節にとても深くかかわっています。腎臓の血管(腎動脈)のまわりには「交感神経」がからみつくように走っていて、脳と腎臓のあいだで血圧を調整する信号をやりとりしています。
この交感神経が過剰に活発になると、次のような悪循環が起こります。
- 血圧を上げるホルモン(レニン)の分泌が増える
- 腎臓が塩分や水分を体にため込みやすくなる
- 腎臓の血管が縮んで血流が変化する
- 腎臓から脳へ「血圧をもっと上げろ」という信号が送られ、さらに交感神経が活発になる
腎デナベーションはこの悪循環を断ち切り、交感神経の過剰な活動を抑えることで降圧効果を得ることをねらった治療です。
治療の具体的な手順
- 太ももの付け根(鼠径部)を局所麻酔し、動脈からカテーテルを挿入します。
- カテーテルを腎動脈まで進めます。
- カテーテルの先端から高周波エネルギーまたは超音波を照射し、腎動脈の壁を通して外側にある交感神経に作用させます。左右両方の腎動脈に対して処置を行います。
-
処置が終わったらカテーテルを抜き取ります。体内に器具は残りません。
- 基本的に全身麻酔は不要です(局所麻酔+鎮静剤で行います)。
- 所要時間はおよそ1-2時間程度です。
- 通電時に軽い腹部の違和感や痛みを感じることがありますが、鎮痛薬で対処できます。
- 術後に痛みが長引くことは通常ありません。
- 短期間の入院が必要です(数日程度)。
どんな方が対象になるの?
腎デナベーションはすべての高血圧の方に行う治療ではありません。次のような条件にあてはまる方が検討の対象になります。
- 利尿薬を含む3種類以上の降圧薬を適切な量で飲んでも、診察室血圧が140/90 mmHg以上の方(治療抵抗性高血圧)。
- 二次性高血圧(腎臓やホルモンの病気など)が除外されている方。
ただし、腎動脈の太さや形、腎臓の機能などによっては実施が難しい場合もあります。適応は診察・検査のうえで慎重に判断します。
期待できる効果
- 海外の大規模臨床試験(SPYRAL HTN-OFF MED試験など)では、24時間を通じて収縮期血圧が有意に低下することが確認されています。
- 日中だけでなく夜間の血圧もしっかり下がることが報告されています。
- 効果は治療後3か月時点で確認され、その後も長期にわたり持続する傾向があります
- 血圧が改善すれば、お薬の種類や量を減らせる可能性もあります(ただし保証はできません)。
安全性について
海外の臨床試験では、腎デナベーションに起因する重篤な合併症はほとんど報告されていません。腎動脈の高度狭窄や閉塞が生じたという報告例もなく、安全性は通常のカテーテル検査(腎動脈造影検査など)と同等と考えられています。
起こりうる合併症として、カテーテル挿入部の内出血や血腫がありますが、適切な対処で対応します。
海外での実績・承認の歩み
- 2023年 ヨーロッパ高血圧学会ガイドラインで世界初の「推奨」が付与
- 2023年 アメリカFDA(米国食品医薬品局)が承認
- 日本でも日本高血圧学会・日本心血管インターベンション治療学会・日本循環器学会の3学会がコンセンサスステートメントを公表
- 2026年3月 日本で正式に承認・実施可能に
治療後の生活について
腎デナベーションは「お薬をやめるための治療」ではありません。治療後も、お薬の服用と生活習慣の改善は基本的に続けていただきます。あくまで従来の治療に上乗せする選択肢とお考えください。
治療後は定期的に外来を受診いただき、家庭血圧の記録をもとに、かかりつけの先生と協力しながらお薬の種類や量を調整していきます。多職種チーム(栄養士・薬剤師・理学療法士など)も引き続き生活面をサポートします。
受診から治療までの流れ
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初診・検査血圧測定(診察室・24時間・家庭)、血液検査、ホルモン検査、心電図、心エコー、腎動脈エコーなどで現状を把握します。
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原因の精査二次性高血圧(腎臓やホルモンの病気など)がないかを調べます。内分泌疾患が疑われる場合は院内で連携して精査します。
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治療プラン作成生活習慣の見直し・お薬の調整を行い、多職種チーム(栄養士・薬剤師・理学療法士など)と一緒にプランをつくります。
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腎デナベーション検討お薬と生活改善で十分に下がらない場合、腎動脈の形態なども含めて適応を慎重に判断します。
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治療・フォロー腎デナベーション実施後も、家庭血圧の測定・お薬・生活習慣の管理をチームで継続サポートします。
よくあるご質問
- 腎デナベーションを受ければ、お薬はやめられますか?
- 腎デナベーションはお薬や生活改善と併用する治療です。お薬を完全にやめることを保証するものではありませんが、血圧が改善すればお薬の種類や量を減らせる可能性はあります。
- 治療は痛いですか?入院は必要ですか?
- 局所麻酔と鎮静剤を使用するため、強い痛みはほとんどありません。治療中に軽い腹部の違和感を感じることがありますが、通常は術後に痛みが残ることはありません。短期間の入院が必要です。
- 誰でも受けられますか?
- すべての高血圧の方が対象ではありません。生活改善やお薬をしっかり続けても目標に届かない方を中心に、腎動脈の形態や腎機能なども含めて総合的に判断します。まずは診察でご相談ください。
- 費用は保険がききますか?
- 腎デナベーションは2026年3月から日本で承認されています。保険適用の詳細については診察時に医師よりご説明いたします。
- 通院が続けられるか心配です。
- お仕事やご自宅の状況に合わせて、かかりつけの先生と協力しながら通院間隔を調整します。家庭血圧の記録をお持ちいただくことで、効率的な診察が可能です。
ご予約・お問い合わせ
『難治性高血圧専門外来(循環器内科)』の予約とお伝えください。
かかりつけの先生からの紹介状をお持ちいただくとスムーズです。
- 亀田クリニック 予約センター
-
04-7099-1111
※ 08:00~17:00(第3土・日曜・祝日除く)
2025年4月30日 公開

