生まれてくる赤ちゃんを守るために今あなたにできる大切なこと
百日咳が流行っています。免疫を持つことのできない赤ちゃんにとっては、命にかかわる病気です。妊婦ご本人・ご家族さまもワクチン接種をお願いします。
百日咳(百日咳菌による感染症)は、新生児や生後数か月の赤ちゃんにとって命に関わる重い 病気です。
生後すぐの赤ちゃんは、まだ自分でワクチンによる免疫を持つことができません。 だからこそ、赤ちゃんが生まれる前に、お母さんがワクチンを受けて、赤ちゃんに免疫を届けることがとても大切なのです。
米国疾病予防管理センター(CDC)は、すべての妊婦さんに、妊娠27~36週の間にTdap(破傷風・ジフテリア・百日咳混合)ワクチンの接種を強く推奨しています。これは、お母さんの体内でつくられた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行し、生後早期の百日咳から守ることができると、複数の研究で確認されているためです。

この接種により、お母さんご自身も妊娠後期や産後の百日咳から守られます。
赤ちゃんにとって最初のワクチンは、あなたの接種です。 あなたと赤ちゃんの健康を守るこのワクチン、ぜひご検討ください。
ワクチン接種ご希望の妊婦さんは、亀田クリニック感染症内科外来または亀田ファミリークリニック 館山家庭医外来をご予約ください。
※併せて、生まれた赤ちゃんに接するご家族のワクチン接種もご検討ください。お父様、ご兄弟や同居のご祖父母様のワクチン接種についても感染症内科または家庭医診療科でご相談を承ります。
それぞれの外来をご予約ください。
Tdapワクチン説明書(Boostrix®使用)
このワクチンについて
・ワクチン名:Boostrix®(輸入ワクチン)
・成分:破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、無細胞百日咳抗原(PT、FHA、PRN)
・製造:グラクソ・スミスクライン(GSK 社/ベルギー製)
Boostrix®は、日本では薬事承認を受けていませんが、米国、カナダ、EUなど多くの国で妊婦接種に使用されている信頼性の高いワクチンです。
なぜ妊婦さんに接種するの?
・百日咳は、生後2か月未満の赤ちゃんに重篤な呼吸障害や無呼吸発作を引き起こすことがある感染症です。
・赤ちゃん自身がワクチン接種を開始するのは生後2か月以降です。
・妊婦が妊娠後期(27~36週)にTdapを接種することで、胎盤を通じて抗体が赤ちゃんに移行し、生後早期の感染リスクを大きく下げることができます。
・米国の調査では、妊娠中にTdapを接種した母親の子どもは、百日咳による入院を約90%減少させたとの報告があります。
安全性について
・CDC(米国疾病予防管理センター)、ACIP(予防接種諮問委員会)は、妊婦へのTdapワクチン接種は安全であり、重大な副反応や胎児への影響はないとしています。
・米国では、2011年以降、数百万人の妊婦に接種されてきた実績があります。
・日本産科婦人科学会・日本周産期新生児医学会・日本小児科学会も、Tdapの有効性と安全性について理解を示しており、導入の議論が進められています。
接種スケジュールと接種対象費用
・接種の時期:妊娠27~36週の間に1回
・毎回の妊娠ごとに接種が推奨されます(抗体移行のため)。
・接種後1~3日以内に、接種部位の痛みや腫れ、軽い発熱などがみられることがありますが、多くは数日で自然に回復します。
費用
・10,600円(自費負担)
加えて、診察料などをご負担いただくこととなります。ご了承ください。
注意事項
・日本ではBoostrix®は薬事未承認であり、「医師の個人輸入扱いでの接種」となります。
・DTaP(トリビック®)は日本で薬事承認されていますが、妊婦に対する投与実績が乏しく、安全性や乳児百日咳の重症化予防効果が確立されていません。( Tdapが使用できない場合には接種が考慮されることもあります。)
・本接種は、接種者本人の同意のもとに行われます。
・ご不安がある場合は、接種前に必ず医師とご相談ください。
〈関連資料・推奨の根拠(参考)〉
・Centers for Disease Control and Prevention.“ Tdap During Pregnancy.” ・ACIP Recommendations for Use of Tdap in Pregnant Women, MMWR, 2013日本産科婦人科学会ワクチン接種に関する提言
・母子免疫ワクチン動画 ・女性に関連する感染症について2025年6月