下垂体腺腫とは
脳の真ん中に存在する下垂体という組織から発生した腫瘍です。下垂体は全身のホルモンを司る中心的な役割を担っています。下垂体腺腫は“良性”腫瘍ですが、下記に示すような症状を呈する場合は治療が必要となります。
症状
機能性腺腫(ホルモンを作り出す機能を有する腫瘍の場合)
下垂体はいくつものホルモンの司令塔ですが、下垂体腺腫自体がホルモンを作り出す腫瘍であった場合、そのホルモンの分泌過多により、生理不順や顔貌変化、四肢の変形などさまざまな症状が生じます。ホルモンの正常化を狙った治療が必要になります。
非機能性腺腫(腫瘍自体はホルモンを作り出さない場合)
下垂体腺腫自体は、ホルモンを作りださないこともあります(“非”機能性下垂体腺腫)。
この時は、腫瘍自体は悪さをしませんが、下垂体の直上に存在する視神経を圧迫することで、視野・視力障害(両耳側半盲と言います)を来します。
失明に繋がる状況ですので治療介入が必要となります。
下垂体卒中(腫瘍からの出血による急変)
下垂体腺腫は、血の豊富な腫瘍であるため、下垂体腺腫の内部で出血をきたすことがあります。
急激な視野・視力障害,ものが二重に見える(複視)、強い頭痛などを引き起こし、緊急での治療が必要となります。
診断方法・重症度
- 画像評価 : MRIによる画像評価を行い、腫瘍の位置や大きさ、周囲の構造との関係を確認します。
- 内分泌機能評価 : ホルモン(内分泌)機能の評価により、ホルモン分泌過多の有無を診断へと導きます。
- 視力視野評価 : 現在の視力障害の程度を確認し、治療の緊急性を評価します。
治療方法
機能性腺腫(ホルモンを作り出す機能を有する腫瘍の場合)
ホルモン値の正常化を目指した治療をおこないます。
プロラクチノーマ(プロラクチンという女性の生理機能や乳腺機能を司るホルモンが過剰になった状態)では薬物療法が奏効しますが、他のホルモン産生腫瘍では手術が第一に必要です(その後薬物治療を追加します)。
非機能性腺腫(腫瘍自体はホルモンを作り出さない場合)
非機能性下垂体腺腫でも目の機能を温存・保護するために手術加療が必要になります(有効な薬物治療はありません)。
手術療法
手術方法 | 手術は通常、内視鏡を用いて鼻の穴から副鼻腔と言う鼻の奥のスペースを経由して腫瘍に到達します。 |
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術後合併症 | 術後に脳が浮いている髄液という水が漏れてしまう髄液漏という合併症が存在しますが、我々は自家組織を用いた丁寧な硬膜再建を行なっているため、この頻度が極めて低いです。 |
入院期間 | 術後は1週間程度で退院します。 |

監修者
亀田総合病院・亀田クリニック脳神経外科 東本 杏一
【専門分野】
頭蓋底手術(髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫など)悪性脳腫瘍の集学的治療(神経膠腫、転移性脳腫瘍)微小血管減圧術(片側顔面痙攣、三叉神経痛)
東本医師の外来日
月曜午前 脳神経外科一般外来 / 水曜午後 脳腫瘍専門外来となります。
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