かめだPOST 顎変形症)手術で治る、顎変形症治療との関連

前回は10秒以上息が細くなったり止まったりすることが危ないこと、閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)に治療の流れについてお話ししました。今回はOSAと顎顔面形態との関連についてお話しします。

皆さんは、「OSAは太った方、中年のおじさんがなる病気」という思い込みがありませんか?

確かにOSAと肥満は密接に関連しており、太っていることで息が細くなったり、止まったりすることがあります。しかし、なかには若い小柄な女性で「イビキ」がひどいという方がいます。これは顎が小さいことで、口の容積が狭くなり、舌が口の中に収容できずに喉の奥へ垂れ込んで、気道をふさぎ、イビキの原因となっています。

顎が小さいと、必然的に気道も狭くなり息をしづらいので、顎を突き出して口呼吸をする癖がつきます。これにより肩こりもひどくなり顎の痛みを伴った顎関節症にもなりやすくなります。この口呼吸の癖がつくと歯列は頬の筋肉に押されて、歯列弓※が細くなり、V字型歯列になります。こうなると舌が歯列の間に入り込むことができなくなるため、ますます開口し、口呼吸が優位となる悪循環が起きます。
すなわち、顎が小さいことでOSAになりやすいのです。また、下顎が小さいと物を食べる時に習慣的に下顎を前に出して食べていることがあります。この状態は、下顎の関節、顎関節に変形を起こしやすく、骨吸収を伴う顎関節症を引き起こしやすい状態となっています。

1980年代頃から欧米を中心に小さい顎を正常にして噛み合わせとOSAを治す、顎顔面部の顎骨を移動する睡眠外科治療が行われています。日本でも2000年頃から応用が開始され、亀田総合病院でも数多くの症例を手がけています。

手術は口の中から行い、上顎と下顎を適切な位置へ前に出し、骨固定します。これにより口の容積が広がり、舌が口に収まり、結果として気道が広がって息が楽になります。基本的に顔の表面に傷がつくことはありません。
手術時間は短時間、低出血で行えます。入院期間は術後7~10日間程です。保険適応となります。

顎が小さいことを見分ける方法として、E-line(顔を横から見たとき、鼻尖から上唇、おとがい〔下顎の先端〕を結んでできる直接)を確認してみましょう。
この線に下顎の先端が届いていない時、下顎が小さいことが推察できます。
日頃から、イビキがひどい、顎が小さい、顎関節が痛い、ものを食べづらいなどの自覚症状がある場合、一度ご相談ください。
  • 歯列弓とは歯並びを上から見た時のアーチで、前歯から奥歯までの並び方を指します。
監修者
歯科口腔外科顧問・顎変形症治療センターセンター長・歯科診療科顧問
外木 守雄

【専門分野】
咬み合わせの不具合を治す専門家です。特にあごが小さいことでいびきがひどい方、ご相談下さい。

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