手のシビレに、範囲が広がるものとそうでないものがあったように、足のシビレも、足の一定範囲に留まるものと、だんだん上に昇って行くものがあります。シビレが昇る形のものは要注意です。
症状
腰痛で始まります。腰痛は、いろいろな病気で起こりますから、腰痛だけでは椎間板ヘルニアとは言えませんし、治療も痛みに対する対症療法で治療します。足のシビレを伴うときは要注意です。最も多いのは、第4~5腰椎の間の椎間板ヘルニアで、このときは、第5腰椎神経根が巻き込まれます。この神経は、下腿の外側から足先にかけて分布します。また、足首から先を上に挙げる筋肉にも命令を伝えていますので、この神経が障害されると、歩くときに足先が持ち上がらなくなります。飛び出した椎間板ヘルニアは、多くの場合、片側の神経を圧迫する程度の大きさですので、シビレは片足に起こります。
腰痛が起き、片足がシビレたら、腰椎椎間板ヘルニアです。
自己診断のポイント
腰痛だけなら、いわゆる「ギックリ腰」。腰痛と片足のシビレがあれば腰椎椎間板ヘルニアです。
解説

治療
治療の第一は、頸の安静です。まずポリネックと言う頸にうまく合うように作られたプラスチックのカラーがあります。これを眠っている間着けます。症状が消えない場合や、元の生活に戻って症状が再発したときは、覚悟してください。手術が必要です。しかし、手術で症状が全部消えることはないと考えてください。
脊髄の病気はこの病気に限らず、早ければ早いほど、症状が軽ければ軽いほど治療効果が期待できます。しかし、手術には当然危険が伴いますので、手術に踏み切るには、医学的な問題だけではなく、患者さまの人生観、生活様式、社会的な適応など総合的な判断が必要です。
アメリカなどで一時キモパパインという薬を椎間板に注射して、溶かしてしまう治療がもてはやされました。しかし、多数の治療例の再検討を行った結果、内科的に治療したのと差のないことが明らかになりました。
手術治療にせよ、キモパパインにせよ、内科的治療にせよ、一年後の成績はあまり変わりません。手術は、神経症状や、腰痛を早く取り去る点では効果があります。手術をしても、3~5%位の再発率があります。
現在では、手術に手術用顕微鏡が導入され、安全に手術ができるようになりました。
出典 : 橘滋國『シビレを感じたら読む本』、講談社、2012
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脊椎脊髄外科顧問 橘 滋國
