前回は、シビレの原因は神経の異常興奮状態にあることと、痛みを伝える神経繊維の異常興奮だけではなく、神経繊維間の漏電でもシビレが起こることをお伝えしました。今回はシビレの原因についてさらに詳しくご説明します。
前回ご説明したように、末梢神経はとても複雑な形をしていて、神経繊維はワックスのようなものにおおわれ、お互いに影響を与えないように絶縁されています。この仕組みが神経の圧迫や、いろいろな病気で障害されると絶縁が保てなくなり、末梢から伝わってきたさまざまな感覚(触った感じですら)が、痛みを伝える神経繊維に伝わってしまいます。漏電です。これが、ジリジリ感や、焼けるような感じとして脳に伝達されるのです。
全身疾患によるシビレ
シビレの原因として、全身の病気が陰に隠れていることがありますので、注意が必要です。厳密には、陰に隠れた病気によって、全身の末梢神経が広く障害されるものと、局所の末梢神経の病気が多発して全般的な神経障害の形をとるものがあります。
原因となる病気としてもっとも多く見られるものに、糖尿病性の神経障害があります。この場合も、全身の末梢神経が広く障害されている場合と、局所の末梢神経障害が多発して、全身性の神経障害の形をとるものとがあるので注意が必要です。多発性のものでも、糖尿病によって、神経が傷つきやすくなっていることが基礎に存在すると考えられています。
その他の全身疾患の病気としては、ウィルス感染症後のアレルギー病「ギランバレー症候群」と呼ばれるものがあります。詳しくは今回触れませんが、シビレよりも脱力(運動麻痺)を感じる病気で、急速に全身の力が入らなくなり、何となく手足にシビレを感じます。この病気はきちんと治療すればほとんどの人は回復しますが、放置すると、呼吸器まで麻痺して命にかかわります。ほとんどの例で発病する数日前に発熱をみます。熱が下がった後に、前述した手足のシビレや脱力を感じたら、すぐに病院へ行くべきです。
また、抗がん剤の副作用などにより、神経細胞そのものが病気になる場合に障害を起こすこともあります。病気は、神経細胞にあるのですが、障害は、長い神経細胞の突起先端に起こります。したがって、手足先端のシビレ、脱力が起こった場合、薬の一時中断を余儀なくされることがあります。その他、断酒薬も神経障害を起こすので注意が必要です。
圧迫による神経障害
障害は一晩、回復は早くて三ヶ月!
圧迫による神経障害はまた詳しくご説明しますので、ここでは基礎的なものに触れます。泥酔状態で不自然な格好で寝込んでしまうと、神経が圧迫されて麻痺してしまうことがあります。有名なのは、上腕の下三分の一のところで橈骨神経が圧迫され、手の甲がシビレて手首が上がらなくなります。これはとても色気のある名前で、Saturday night麻痺と呼ばれています。週末に恋人に腕枕をして寝たときに起こるから、というのが名前のいわれです。
圧迫神経障害は、時には衣類が原因になります。とくに膝下までのゴムのきついハイソックスや、無理やりスマートに見せるためのガードルで神経が圧迫されることがあるので注意しましょう。
このほか神経によって、それぞれ圧迫されやすい場所があります。圧迫による麻痺は一晩で起こりますが、回復には時間がかかります。
次回も引き続き、局所の病気などについてご紹介しますので、ご覧ください。
出典 : 橘滋國『シビレを感じたら読む本』、講談社、2012
もっとシビレについて知りたい方は、私が執筆している『シビレを感じたら読む本』に詳しく書いています。クリニック1FのマーラマやKタワー1FのPAOLAでも販売しています。
脊椎脊髄外科顧問 橘 滋國
