今回は男性側の不妊原因について取り上げたいと思います。
子供が欲しいと思った時、まず女性の方は産婦人科を受診することがほとんどですが、不妊原因を調べてみると、カップルの約50%は男性側にも原因があるという結果が出ています。男性側の原因は造精機能障害・射精障害・勃起不全など多岐に渡ります。生殖医療専門医は2016年度現在、産婦人科医師と泌尿器科医師を合わせて約600名おりますが、男性の不妊症を専門に診る医師は45名しおらず、男性不妊の検査・治療ができる施設が少ないのが実情です。
今回は男性不妊の原因とその検査や治療法について、いくつかご紹介いたします。
造精機能障害
精子を作る機能が低下する状態のことを指し、男性の不妊原因の約8割を占めると言われています。診断は精液検査で行います。採取した精液を顕微鏡で観察し、量、濃度、運動率などを測定します。基準値は世界保健機構(WHO、2010年)によって定められていますが、あくまでも参考値であり基準値を下回ったら子供ができないというわけではありません。精液所見はストレスや睡眠不足などでも左右しますので複数回行うことを勧めています。最近ではスマートフォンを用い自宅で精液検査ができる簡易キットなども販売されています。


造精機能障害の約半数の方は原因がわからないため、これといった治療がないのが現状です。約1/3の方に精巣周りの静脈が太くなる精索静脈瘤が見つかりますが、手術により治療を行うとその半数以上の方で精液所見の改善が認められます。その他、精液所見の悪い方の中には精巣腫瘍が見つかることもあるため、当院では生殖医療科を受診された患者さまで精液所見が悪い場合は男性不妊外来(男性不妊専門の泌尿器科医師)を受診していただくようにしています。


無精子症
造精機能障害の一つです。射出精液中に精子を認めないことがありますが、精子の通り道が詰まっている閉塞性無精子症、また造精機能が低下している(もしくはない)ために精子がいない非閉塞性無精子症の2つに分けられます。手術を行うことにより閉塞性無精子症はほぼ100%、非閉塞性無精子症は約30~40%の方で精巣内にある精子を回収することができます。
射精障害・勃起不全
勃起不全(ED)の患者さまは日本に約980万人いるという報告があり、40歳代では約20%程度、年齢を重ねるごとに有病率は上がることがわかっています。それ以外にも不妊治療により排卵日付近の夫婦生活を指導され、心因性に射精障害・EDを起こすこともあります。また、糖尿病など内分泌疾患などが背景にあり、このような症状を起こすこともあります。原因は様々ですが、EDに関しては治療薬剤もありますので、気軽にご相談ください。
男性不妊についての最新の情報はこちら
https://medical.kameda.com/ivf/patient/treatment/male-infertility/index.html 生殖医療科のご案内 亀田IVFクリニック幕張亀田総合病院 生殖医療事業管理部 部長 川井 清考
