肩関節の痛みは外来診療で多く経験する症状の一つです。その症状には肩関節周囲の炎症や腱板断裂など様々な状態が含まれます。このような痛みは、肩関節周囲の筋肉や骨の変性によって引き起こされる場合と、猫背のような不良姿勢によって2次的に引き起こされる場合があります。
肩関節は他の関節に比べて大きな可動域をもつ関節です。この大きな可動域は、肩関節だけなく、脊椎(背骨)や肩甲骨が動くことによって保たれています。背中が伸びた状態では楽に届く高さであっても、猫背の状態では肩を無理に動かさなければ届かなくなってしまいます。そのため、脊椎や肩甲骨の動きが悪くなることで、肩関節にかかる負担は増大します。また、肩関節に負担のかかる動作は日常生活や仕事の動作の中に多く存在しています。特に、高い棚に手を伸ばす、電球を交換する、洗濯物を干すなど、頭より高い位置での作業では、肩関節の痛みを引き起こしやすくなります。肩関節を大きく動かす動作の維持には、脊椎や肩甲骨の可動性を保ち、不良姿勢を予防することが重要です。筋力低下や腱板断裂、関節変形などが原因の場合は病院での適切な治療が必要になりますが、不良姿勢が原因の場合には姿勢を改善することで予防できる可能性があります。
今回は不良姿勢の予防を目的としたセルフエクササイズをご紹介いたします。
1つ目は肩甲骨が動くための土台となる脊椎や肋骨周囲の柔軟性を改善する運動です(写真1)。
両手を頭の後ろで軽く組み、背もたれに寄り掛かるように胸から腹部にかけての筋肉を伸ばします。腰だけで反らないように、下腹部は軽く引っ込めるように行います。軽く深呼吸をしながら10秒程度伸ばし開始姿勢に戻します。

2つ目は肩甲骨の動きを改善する運動です(写真2)。
お尻、背中、頭を壁につけるように立ち、脇を閉めて、肘を90度に曲げた状態で親指を壁に近づけるように腕を開きます。同時に、肩甲骨は背骨を挟むように寄せていき、胸を開いたら開始肢位に戻します。
どちらの運動も10回1セットを目安に、1日3セット程度行います。肩や背中の痛みがない範囲で、気持ちよく行える強度で継続しましょう。

不良姿勢は肩関節の痛みだけでなく、頸部痛や腰痛を引き起こす原因ともなります。そのため、脊椎や肩甲骨の柔軟性を改善することは、肩関節痛をはじめ、頸部痛や腰痛の軽減にも役立ちます。セルフエクササイズで脊椎や肩甲骨周囲の柔軟性を改善し、良い姿勢を保つように心がけましょう。
リハビリテーション科のご案内亀田総合病院 リハビリテーション室 宮崎 準也