皆様こんにちは。腎臓高血圧内科の松波昌寿と申します。今回はバスキュラーアクセスについてご紹介したいと思います。
バスキュラーアクセスとは?
バスキュラーアクセス(vascular access:VA)とは、血液透析を行う際に、血液を脱血、返血するための出入り口(アクセスルート)のことです。以前は“シャント”と言われていましたが、動静脈短絡を指す言葉であったことから、近年では動脈表在化、中心静脈カテーテルなどの動静脈短絡を伴わないアクセスルートも含めて、国際的に“バスキュラーアクセス”という言い方で統一されるようになりました。
バスキュラーアクセスの種類
バスキュラーアクセスは大きく2つに分類されます。動静脈短絡を伴うもの(図A、図B)と、動静脈短絡を伴わないもの(図C、図D)です。
動脈と静脈を縫い合わせてつなぐことで、動脈内の高圧の血液が低圧の静脈内へ流入するため、そのルートの血流量、血流速度は増加し、そのルートから脱血、返血を行うことができます。このうち、動脈と静脈を直接つなぐ方法、自己血管内シャント(図A)であり、バスキュラーアクセスとしては最も理想的です。閉塞を起こしにくく、長期間の使用が見込めるからです。ただし、穿刺が可能になるまで2~4週間かかるため、あらかじめスケジュールを把握した上で、透析治療の準備をする必要があります。
また、動脈と静脈を人工血管でつなぐ方法が人工血管内シャント(図B)です。ご自身の血管で内シャントが作れない場合は人工血管を使用した内シャントを作ります。自己血管に比べて閉塞や感染症のリスクが高く、寿命も短くなります。
次に、動静脈短絡を伴わない方法として動脈表在化(図C)と中心静脈カテーテル(図D)があります。動脈表在化は、上腕動脈を皮下に持ち上げ、直接その持ち上げた動脈を穿刺し脱血する方法です。シャント手術が困難な場合や、心臓の機能が悪い方に適応となります。
中心静脈カテーテルは、首の中心静脈へカテーテルを挿入し脱血、返血を行う方法です。このカテーテルには、長期間留置できるカフ型カテーテルと一時的な使用を想定している非カフ型カテーテルに大別されます。カフ(弁)があると、感染しにくく、組織にしっかり癒着するので抜けにくくなります。透析のたびに穿刺しなくて済むという利点はありますが、常に身体からカテーテルが出ている状態となるため、注意が必要です。
各バスキュラーアクセスの特徴を熟知し、大切に使用することが重要です。

