皆様こんにちは。腎臓高血圧内科の川地惇朗と申します。今回はあまり知られていない腎臓の大切な働きと、その治療についてご紹介したいと思います。
腎臓の機能を表す数値
尿をつくる!
腎臓の働きとして、皆様ご承知の通り、「尿をつくる」という機能があります。しかし、それ以外にも重要な機能がいくつもあるのです。

赤血球をつくる!
腎臓は赤血球をつくるために必要な「エリスロポエチン」というホルモンを産生しています。貧血はHb(ヘモグロビン)という数値で確認しますが、貧血が重度になると息切れ、動どうき悸、疲れやすいといった症状が出てくることもあります。
腎不全が進行してくるとエリスロポエチンの産生が低下することで、腎性貧血といわれる貧血がみられるようになります。かつては腎性貧血に対する治療は輸血を行うほかありませんでした。しかし、現在では外来で定期的にエリスロポエチン製剤を皮下注射で投与する方法が一般的になっているほか、内服のお薬も近年出てきています。

骨をつくる!
腎臓と骨は密接に関わっています。実際、腎不全が進行してくると骨粗しょう症の割合が増してくることが知られています。原因としては、リンやカルシウムというミネラルのバランス、いくつかのホルモンが関わっています。
腎臓にはビタミンDを活性化する作用もあり、ビタミンDの作用が不足するとカルシウムが低下してきます。カルシウムが低下すると、骨を溶かして血中のカルシウムを増やそうとするホルモンが増えてしまいます。
リンは食品添加物など加工品にたくさん含まれていますが、腎不全があるとリンが体に溜まりやすくなります。溜まってきたリンを頑張って尿から出すホルモンも骨に悪影響を及ぼします。
これらのホルモンの異常は、骨粗しょう症のみならず血管の石灰化を進行させることも知られています。特に心臓を栄養する冠動脈といわれる血管が石灰化することで、狭心症や心筋梗塞などの発症につながります。
食事内容の指導を行い、ビタミンDのお薬、リンを下げるお薬などを用いて、適切なリンとカルシウム、ホルモンのバランスを保つことで、骨粗しょう症の進行や血管石灰化を予防していくことが重要です。
少し難しい話になりましたが、縁の下の力持ち、腎臓の隠れた機能について書かせていただきました。
まずはご自身の採血や検尿の結果を確認してみてください! 「eGFRが低い」「尿検査で異常がある」などなど、何か心配ごとがありましたら腎臓高血圧内科までご相談ください。

