椎間板ヘルニアのある方の喫煙率は、非喫煙者で椎間板ヘルニアのある方に比べ明らかに高く、"喫煙者は腰痛になりやすい"ことが、わかっています。
今回は、なぜ喫煙が腰を痛めることになるかのお話しです。
喫煙は椎間板を悪くする
背骨の骨と骨の間には、クッションの役割をする「椎間板」があります。椎間板には血管がなく、椎間板の周囲の毛細血管から染み出た栄養分を、スポンジが水を吸い込むように吸収しています。
喫煙すると、タバコに含まれる「ニコチン」が、椎間板周囲の毛細血管を収縮させ、栄養が充分に行き渡らなくなり、椎間板を変性させます。
実験で、8週間ニコチンを与えたウサギは、血管の数が生理食塩水を与えていたウサギの1/2程度に減っていたそうです。
栄養の行き渡らない状態が続くと、椎間板の水分が奪われスカスカになり、クッション性が薄くなるため、骨同士がぶつかりとがって神経を圧迫します。また、椎間板が縮んでバランスが悪くなるため、周りの靭帯がそれをカバーしようと厚くなり、神経を圧迫し腰痛が起こります。
更に、下の図より、喫煙は腰だけでなく首(頚椎)の椎間板にも影響を及ぼしていることがわかります。

ビタミンC(コラーゲン)が不足する
椎間板は、成分の約8割が水分のコラーゲンで出来ているゼリー状の軟骨をいいます。
このコラーゲンは、ビタミンCにより作られていますが、タバコを1本吸うと、レモン半分のビタミンCが失われてしまうため、喫煙者のコラーゲンを作る能力は低下します。
8週間ニコチンを与えたウサギの場合、コラーゲンを作る能力は、1/3以下だったそうです。喫煙者は、慢性的なビタミンC不足により、お肌の老化と共に、椎間板の老化も早め、腰痛が起こりやすくなります。
骨粗しょう症を起こしやすい
喫煙は、女性ホルモンの不足とカルシウムの吸収率を下げ、骨密度を低下させます。骨が粗くスカスカになれば、骨がつぶれたり、変形して背中の痛みや腰痛が起こります。
受動喫煙でも椎間板は悪くなる!?
ラットの実験で、8週間受動喫煙させたところ、やはり椎間板の変性がみられたそうです。腰痛持ちの方は受動喫煙の配慮も必要です。
また、8週間の受動喫煙後、3週間禁煙状態にしたところ、椎間板が修復されていたそうです。これらの実験から、禁煙する時期が早いと、すでに壊れかけている椎間板なども修復される可能性があるといわれています。腰に負担を掛けるお仕事やすでに腰痛持ちの方は、早めに禁煙を決断したほうがいいですよ。
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