「先生、おやつのタイヤキつぶれちゃいました。本と一緒に持ってきたからですよ!!!」
-ホントだ、あんこが飛び出しちゃった!まるでタイヤキヘルニアですね。
「タイヤキヘルニア・・・、ナニ、それ?」
-ヘルニアというのは、内臓や組織が体の中のあるべき場所から、別の場所に飛び出してしまった状態(脱出)を言います。
鼠径(そけい)ヘルニア、食道裂孔ヘルニア、・・・、などいろんなヘルニアがあるんですよ。脊椎外科でヘルニアと言えば、「椎間板ヘルニア」ですね。
そんなわけで、今回は腰椎椎間板ヘルニアのお話をしましょう。
椎間板の構造

椎間板は椎体と椎体をつなげる重要な器官です。
イラストは腰椎を斜め後ろから見たところです。椎間板は外側を取り巻く線維輪(せんいりん)と軟らかな髄核(ずいかく)でできています。
髄核は水分を含む弾力のある組織で、衝撃を吸収するクッションの役割をしています。なんと荷重の80%が椎間板にかかるんですよ。
若い人の椎間板はMRI T2 強調画像では白く描出されレンズ型をしていますが、老化により水分を失うと黒く描出されるようになります。
椎間板の構造

クッションカバー(線維輪)が破れて、中の髄核が飛び出したのが椎間板ヘルニアです。
最もヘルニアが起きやすい椎間板は第4腰椎と第5腰椎の間(下から二番目)、第5腰椎と仙骨の間(一番下)の2カ所です。
脱出したヘルニアが神経を圧迫し、急激な腰痛とともに下肢の痛みやしびれを来します。これが座骨神経痛です。
症状が強い場合には痛みだけでは無く、筋肉の麻痺により足を持ち上げにくくなったり(下垂足)、尿が出にくいなどの障害(排尿障害)を来すことがあります。
-イラストを見てください。
同じレベルのヘルニアでも、内側に脱出すると一つ下の神経が、外側に脱出すると一つ上の神経が圧迫されることがわかりますね。
そして、痛みの起こる場所は障害を受けた神経により異なります。
例えば第5腰髄神経 (L5) が障害された場合には、おしりから太ももの後ろを通って、すねから親指にかけて痛みが走ります。
椎間板ヘルニアの治療
足の麻痺や排尿障害を来した場合には、緊急手術が必要になります。できるだけ早く病院を受診してください。
症状が腰痛や座骨神経痛だけの場合には、安静や消炎剤の服用などにより症状は改善します。
どうしても痛みが強い場合には、神経根ブロックをしてもらっても良いかもしれません。約80%位の人が保存的治療により症状は改善すると言われています。
保存的治療でも痛みが改善しない場合や、麻痺や排尿障害がある場合には手術が必要になります。
私たちは手術用顕微鏡を用いた安全な手術を行っています。手術の適応や方法などは「脊椎脊髄外科医」にご相談ください。
- 京橋クリニックでは診察を行い、手術の必要な場合は鴨川の本院(亀田総合病院)で行います。
脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫
