かめだPOST 【前立腺肥大症外来】男性排尿機能の治療

50歳を過ぎると前立腺が肥大し、なんらかの症状に悩まされることが多くなってきます。基本的には肥大した部位を除去することが根治療法となりますが、薬剤治療も選択肢が増え劇的な効果がある方もいらっしゃいます。また、当院では3種類の外科治療を各個人の前立腺の容量や形状、全身疾患(心機能や肺機能など)に合わせ選択します。
カテーテルを入れない生活(カテーテルフリー)を送っていただけるよう取り組んでいます。90歳を超えたかたでも麻酔が問題なく行えると判断されれば、手術方法、手術時間など対策を練り実施しています。

  1. お酒を飲むと尿の出が悪くなる方。
  2. 公衆トイレで排尿が終わるのに、2、3人の方が先に終わる方。
  3. 膀胱炎、前立腺炎など(尿路感染)が治らない方。
  4. 90歳を超え手術は危険だから管の交換をしましょうと言われた方。
  5. 心機能や肺機能が悪く手術は難しいと言われた方。
  6. 薬を飲み忘れることが多い方。
  7. ご家庭でトイレを占拠し、怒られている方。

などご相談いただければと思います。

前立腺について

正常な下部尿路

前立腺の役割とは

膀胱の下にあり、尿道を取り囲むように存在します(または前立腺の中を尿道が貫通している)。通常はクルミ大の大きさで直腸の前方に接するようにあるため、肛門から指を挿入すると触れることができます。前立腺は男性にのみ存在する臓器で精液を作ります。精嚢で7割、前立腺が3割を作ります。射精される精液中には1-5%程度の精子を認め、前立腺精嚢は精子を元気に泳がせるためのエネルギー源かつ精子を運ぶプールのような役割をしています。

前立腺肥大症の原因

前立腺肥大症の原因は未だ定かではありませんが、遺伝や高齢化など様々な要因により増えている疾患の一つです。
下記図はおおよその自然経過です。

正常
尿勢良好
50歳頃
腺腫が形成
60歳頃
尿の勢いが弱くなる
70歳頃
排尿筋が過形成
膀胱の症状(頻尿・切迫感)
人によって
膀胱内の圧が上昇し、憩室形成
残尿増加、感染など

前立腺肥大症の診断

  1. セルフチェック:簡単な診断方法を紹介します。
    一つは排尿時間です。哺乳類の平均排尿時間は約22秒です。これは大きな象から小さな犬などに至り差があまりありません。一度排尿時間を調べてみると良いでしょう。次に昔(自分の若い時と)と比べて尿の勢いが半分以下なら治療が必要かもしれません。

  2. 問診:簡単な質問表(I P S S;国際前立腺症状スコア、O A B S S;過活動膀胱質問表など)
  3. 尿検査:尿中に赤血球(出血)がないか、白血球(感染)がないかなど調べます。又、尿糖や蛋白尿が無いかを確認します。
  4. Blood test(採血):腎機能障害がないかを調べます。
  5. PSA検査:Prostate-Specific Antigenの略です。前立腺の病気を見つけます。PSAが高いとがんの可能性もあるため精査が必要となります。
  6. Ultrasound imaging(sonography) 超音波検査:前立腺の大きさや腎臓への負担がないかなどを調べます。
  7. Urinary flow test(U F M:尿流量検査):排尿量、最大尿流量(尿の勢いの最大値)、平均尿流量、排尿時間を検査します。
  8. Postvoid residual volume test(残尿測定):排尿後の残尿量を調べます。通常排尿後は0mlです。
  9. 24時間排尿日誌:自分でも自身の排尿状態を確認できる非常に有用な検査です。特に夜間頻尿の方には是非つけていただきたい検査になります。夜間の排尿量や回数を日誌につけることで、水分摂取量との関係を知ることができます。
  10. 複雑な病態の場合は?
    例えば

    ・ 膀胱の機能が脊椎、脳、糖尿病などの影響を受けている場合。
    → Urodynamic and pressure flow studies.(ウロダイナミックスタディー:膀胱機能を詳しく検査します)

    ・ 前立腺がんあの疑いがある。
    → 前立腺生検で前立腺の組織を採取する検査をします。

    ・ 血尿、膿尿がある
    → 膀胱鏡検査で尿道膀胱内に異常がないか調べます。

前立腺肥大症の治療

低侵襲な治療を選択し、治療を開始します。以下の項目を考慮し、相談し治療戦略を練ります。

  • 排尿状態
  • 症状がどの程度日常生活に影響しているのか
  • 前立腺の大きさ
  • 全身の健康状態
  • 年齢

内服治療で速やかに症状が改善される方も多く、内服治療の良し悪しも今後の治療戦略を練る重要な判断になります。

A) 薬で治療する

  • α1ブロッカー:アルファーワンブロッカーと呼びます。膀胱頚部や前立腺内の筋肉を緩めることで排尿をしやすくします。
    世界的に高齢男性が増加したことで前立腺肥大症の治療薬は増えました。α1ブロッカーは元々高血圧の治療薬として開発された経緯があります。このため血管が拡張し立ちくらみなどの副作用が出やすいです。
    ハルナール®️、ユリーフ®️、フリバス®️など

  • ホスホジエステラーゼ5阻害剤(PDE5):勃起改善剤と知られるタダラフィル(シアリス®️)が前立腺肥大症に伴う排尿障害に効果があることが確認されました。一般的にα1ブロッカーよりも効果は劣りますが、膀胱の血流改善などが期待できます。一方血管拡張作用があるため、ほてりや消化器症状(むねやけ、むかつき)などが出やすいです。
  • 5-alpha reductase inhibitors(5α-還元酵素阻害薬):前立腺肥大の成長を助けるジヒドロテルトステロンの生成を抑制し、肥大した前立腺を縮小させる効果があります。男性ホルモンをブロックするため、勃起障害、性欲減退や女性化乳房などが出やすいです。喜ばれる副作用としては発毛作用があります。アボルブ®️など

B) 手術で治療する

  • HoLEP(ホーレップ:前立腺核出術):holmium laser enucleation of the prostate
    肥大した腺腫を取り除きます。

    1.肥大した腺腫とカプセルの間を剥離します。
    2.膀胱内に腺腫を落とします。
    3.カプセルだけになります。
    4.6か月~1年後
    排尿筋の過形成が改善します。
  • CVP(前立腺蒸散術):contact laser vaporization of the prostate
    肥大した腺腫をレーザーで蒸散します。

  • TURP(経尿道的前立腺切除術):Transurethral resection of the prostate
    世界的に標準手術とされます。
    当科で使用する内視鏡は、いずれの手術も24frの細い手術内視鏡で行うため、術後の尿道狭窄や、疼痛が少なくなります。(一般的には26fr以上のものが標準)
    手術スケジュール:手術前日入院、1-2日間尿道カテーテル留置。カテーテル抜去翌日~退院となります。土曜日手術もあり休日を利用することもできます。

長所 短所
HoLEP ほとんど腺腫が残らない、PSA低下する効果が最大 手術が難しいため、施行できる施設が限られる。
CVP 小さな前立腺には最適
手術が容易
手術後むくみが出やすく、初期では排尿困難がある。
TURP 切除面(レベル)を調整しやすい。
膿瘍がある方には最適
時間がかかると出血が多くなる
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