人間の脳へ血液を供給する大事な頚動脈。この頚動脈の狭窄病変は、以前はハンバーガー、ステーキなどの動物性脂肪の多い食事をたっぷりと取るアメリカ人に特に多く、和食を基本とする日本人にはあまり見られなかったのですが、食事の欧米化と、運動量の低下など都市型の生活習慣へと変化してきたためか、近年、本邦でもこの頚動脈が狭窄する病気が増えております。
頚動脈の狭窄とは、動脈の内径が細くなり、それが原因で脳血流の低下や、狭窄部位で血栓などができるために、脳梗塞を来たしたり、一過性の脳虚血発作をおこしたりします。
このような病態になりやすい要因として、
- 高血圧・・・上(収縮期)の血圧が常時140~150mmHg以上、下(拡張期)の血圧が90mmHg以上の人。
- 喫煙・・・20本/日以上の人はハイリスクグループといわれてます。
- 高脂血症・・・食事療法にもかかわらず悪玉コレステロールの高い人は薬物によるコレステロール抑制が推奨されます。
- 糖尿病・・・これも適切な食事療法と血糖管理が、頚動脈を守ることになります。
- 家族歴・・・これは防ぎようがありませんが、2親等までの血族者の中に脳卒中や心臓病(狭心症や心筋梗塞)の方がいないかどうかを知っておくことは外来受診時や投薬や治療の指針にとって、参考となります。
頚動脈の病気を診断する方法には、
- 聴診:頚動脈の上に聴診器をあてると、狭窄のある方では雑音が聴取されることがあります。
- 超音波検査:エコーで頚動脈の狭窄の程度やそのくわしい性状が検出できます。
- CT検査:最新の3DヘリカルCT装置により、造影剤を静脈注射しながら撮影すると、狭窄の程度や性状といった治療計画を立てる上で参考になる情報が得られます。
- MRI:頚動脈病変だけでなく、脳実質内の梗塞巣の有無や、その程度を知ることが出来ます。
- 脳血管撮影:カテーテルを大腿動脈や上腕動脈より挿入し、頚動脈に誘導して、そこから造影剤を注入して、撮影する検査で、手術しなければならない場合には必須の検査といえます。この血管撮影は多くの場合、入院が必要となる検査です。
上記の検査に加え、外来でよく行われる検査として、実際に脳血流が低下しているかどうかを評価する目的のために特殊な気体を吸入しながらCTを撮像する検査(Xeゼノン-CT)や微量の放射性同位元素を注射しながら脳を撮像するRI(ラジオアイソトープ)によるSPECT(シングルフォトン断層法)検査、そして、最近普及してきたPET(ポジトロン断層撮影法)も脳細胞にどの程度の血流があるのかどうかを測定できる有用な検査です。
写真はカテーテルによる血管撮影により得られた3D再構築画像。内頚動脈の高度狭窄(矢印)が多角的に描出され、治療指針に有用な情報を与えてくれます。
- 亀田京橋クリニックでは診察を行い、治療の必要な場合は鴨川の本院(亀田総合病院)で行います。
文責:脳神経外科 田中 美千裕
<脳血管内治療担当部長>
監修者
亀田総合病院亀田脳神経センター 脳神経外科 主任部長/脳血管内治療科 主任部長 田中 美千裕
【専門分野】
脳卒中の外科治療、脳血管内手術、脳機能解剖学、脳循環代謝学、脳動脈瘤に対する血管内手術、頚動脈ステント術、脳血管奇形、硬膜動静脈瘻、脳動静脈奇形、脊髄血管奇形、顎顔面血管腫