はじめに
直腸脱とは、直腸が肛門の外に出てしまう病気です。高齢の女性に多い病気で、直腸が脱出するだけではなく、しばしば便もれ、粘液のもれや便秘をきたします。脱出する直腸の長さは2~3cmの短いものから10cm以上の長いものまでさまざまです。
直腸脱の原因はなんですか?
基本的に加齢や分娩などで骨盤底の組織が脆弱になっていることが挙げられますが、以下の二つの説があります。直腸が小腸などのおなかの臓器に圧迫されて脱出する説と、直腸自体が内側に折り込まれる「直腸重積」が重症化して、肛門外に脱出するという説です。
直腸脱で便もれが生じるのはどうしてですか?
直腸が肛門を通過して肛門外に出たり、また元に戻ったりすることの繰り返しにより、肛門のしまりをつかさどる肛門括約筋の力が弱くなるためです。
直腸脱で便秘を訴えるのはどうしてですか?
もともと便秘がちの方に多い病気ですが、直腸脱では直腸の内腔が狭くなるために、便が排出しにくくなるので、便秘を訴えるのです(図1)。

内科的な治療はありますか?
直腸脱に内科的治療はありません。直腸脱はきわめて物理的な病気で、本来あるべき直腸がその場所から逸脱して肛門外に脱出するので、治療は直腸が脱出しないように手術をするしか方法がありません。
直腸脱にはどのような手術をするのですか?
肛門からアプローチする手術と腹部からアプローチする手術の二つに分かれます。多くの手術がありますが、当院では前者としてデロルメ法、後者として腹腔鏡下直腸固定術を行っています。
- デロルメ法:脱出した直腸の粘膜を切除してから、直腸の筋肉を縫い縮める方法です。腰椎麻酔で行える安全な方法ですが、再発率が約20%と高率なのが難点です。
- 腹腔鏡下直腸固定術:メッシュといって、布のようなもので直腸を仙骨に固定する方法です。全身麻酔が必要ですが、手術時間はだいたい2~3時間で、再発率が約2%と低率ですので(図2)、積極的に行っています。

入院期間はどのくらいですか?
デロルメ法も腹腔鏡下直腸固定術も2泊3日です。痛みがあれば、3泊4日になることもあります。
退院後の通院はどうなりますか?
手術後1週間で外来診察をします。排便コントロールのために内服薬を処方します。
手術をしたら便もれや便秘は治るのですか?
直腸脱の手術の目的は直腸脱の消失と、便もれや便秘などの排便障害の緩和です。手術で直腸の脱出はなくなりますが、便もれや便秘には食事療法や内服治療が必要ですので、患者さまにあった処方をみつけなければなりません。手術後は長いお付き合いになります。
直腸肛門外来のご案内
https://medical.kameda.com/general/medi_services/index_101.html亀田総合病院 消化器外科部長 角田明良
