はじめに
これまでの話から排便のトラブルにもいろいろな状態があることがわかりました。ここで皆さんの周りでこれら排便のトラブルでお困りの方を思い出してみてください。女性が多いことに気づきませんか?今回はその理由を解説していきます。
なぜ女性に多いのか?
原因としては、①骨盤内の構造の違い、②女性ホルモン、③妊娠・出産、④意識・趣向の違いが挙げられます。
骨盤の構造の違い
男女の骨盤の構造をみるとその違いは歴然です!女性の肛門直腸のすぐ近くには膣という空洞があるため、男性に比べて周囲の支えが元来弱いことがわかります。このため出産や長年にわたる強いいきみによってこの直腸が引き伸ばされると直腸瘤(ちょくちょうりゅう)と呼ばれるポケット状のものができてそこに便がたまり、便がうまく出せない原因となります。(図1)

ホルモンによる影響
女性ホルモンによる影響です。10代~40才代の女性では排卵から月経までの期間や妊娠中は女性ホルモンの1つであるプロゲステロンの分泌が多くなります(図2)。プロゲステロンは腸管のぜん動運動をおさえる働きがあるため食べたものが糞便として出るまでの時間が長くなる、便中の水分の吸収が多くなり便が硬くなったりします。逆に50才代以降の方ではエストロゲンの低下とともに内肛門括約筋など細い筋肉から筋力低下が生じ、無意識に便が漏れる、漏出性便失禁が起こりやすくなります。

妊娠・出産による影響
妊娠中は前項のホルモンの影響やつわりによる食事摂取量低下もあり便秘になりやすくなります。また出産後は授乳で水分不足になり、便が硬くなり便秘を訴える方もいます。また、出産時に肛門括約筋に傷がつく、一時的な肛門周囲の感覚低下により便の我慢ができづらい切迫性便失禁を起こすことがあります。
意識・趣向の違い
女性の方は皆さん健康意識が高い傾向にあります。特にテレビなど「○○が健康にいい」と聞くと一つの食品を集中してとる傾向にあります。スムージー、ヨーグルト、青汁などは便を軟化させるため便失禁を悪化させることがあります。逆に芋、きのこ、ゴボウなど根菜類を摂りすぎると便が硬くなり便秘の症状を呈することになります。
直腸肛門外来のご案内
https://medical.kameda.com/general/medi_services/index_101.html亀田総合病院 消化器外科部長 高橋知子
