1. 非血管造影検査とは
この分野には非常に多くの検査がありますが、基本的には「造影剤という薬剤を体内に注入(非血管)し、エックス線撮影をする」というものです。“造影剤”とは「エックス線に対して、その存在が“写る”薬剤」全般をいいます。たとえば、バリウム(正確には硫酸バリウム)などがそうです。ほかにもたくさんの種類がありますが、検査目的に応じてその種類や用法が変わります。
また、これらの検査は検査機器としてエックス線だけでなく、必要に応じて超音波(=“エコー”とよばれることもあります)や内視鏡といった装置も同時に使われることがあります。 “検査”と言いましたが、この部門では単なる検査だけではなく、これら画像診断装置を使い“治療”を行うことも少なくありません。たとえば、内視鏡的逆行性胆道造影(後述)では、その検査の結果必要であれば胆汁の排泄を促す手技(胆石の摘出/胆管-十二指腸吻合部の拡大/胆汁廃出用チューブの留置など)を行ないます。
2. (非血管)造影検査の実際
2-a. 点滴静注尿路造影(DIP,Drip Infusion Pyelography)
腎臓、膀胱及びそれらを連絡する尿管を造影する検査です。これらの形態・機能の把握のほか、腎・尿管・膀胱などの腫瘍、腎結核、腎盂腎炎、水腎症、尿路結石などがこの検査の対象となります。検査前は禁食とし、検査開始直前に排尿していただきます。検査時間はだいたい30~40分ほどで、造影剤という薬剤を点滴しながらエックス線撮影を行なっていきます。
2-b. 胃エックス線検査
検診などでも広く行なわれているため、「バリウムの検査」ということで比較的よく知られている検査だと思います。
患者さまにバリウムという造影剤と、発泡剤という炭酸の粉や錠剤を飲んでいただき,撮影者の指示に従って体を動かしていただきます。体を動かすことによって、胃粘膜にバリウムをよく付着させながら、いろいろな角度で胃全体の写真を撮影していきます。
バリウムがよく付着するほど診断価値の高い写真が出来上がるため、患者さまのご協力が必要となります。
2-c. 大腸エックス線検査
基本的には胃のバリウム検査に似ていますが、大腸の場合では肛門から細い管を挿入し、その管を使ってバリウムを送液していきます。
このとき、体を動かしていきながらバリウムを大腸の最深部まですすめていきます。その後、空気を送り込み、大腸をほどよく膨らめた状態でエックス線撮影をしていきます。
長いうえに屈曲にとんだ管状の臓器である大腸は、病変部が盲点になりやすいため、胃の検査と同じように多方向撮影が必要になります。
2-d. 内視鏡的逆行性胆道造影(ERCP,Endoscopic Retrograde CholangioPancreatography)
胆道とは、肝臓や膵臓で生産された胆汁・膵液とよばれる消化酵素が、消化管(胃の先にある、十二指腸とよばれる部分)へ流れていく管をいいます。胆道の結石、炎症、腫瘍、これらの原因による閉塞性黄疸などが検査の主な対象です。
内視鏡を口から十二指腸まで挿入し、それを操作して胆道へ造影剤を送り込みます。また、この手技を応用して、必要があれば結石の除去や胆汁排泄を促すための管を留置するなどの治療を行うこともしばしば行なわれています。
- この検査では、エックス線のほかに内視鏡が重要な役割を果たしています。そのため、内視鏡室と協力して検査/治療にあたっています。