1. CTとは
CTは、“Computed Tomography”の略で、日本語に直すと「コンピュータ断層撮影」といいます。最近は、一般の方でも“CT”と略して使われる方が多いように思われます。
エックス線を人体にあて、その透過エックス線を人体の周囲360°にわたって収集し、コンピュータで解析処理をします。そうすることで、人体の内部の構造を“断面(厳密には厚みがあるので“断層”といいます)”として得ることができます。これがCTの原理です。
撮影部位にもよりますが、おおむね検査時間は5分から15分程度です。
造影剤とよばれる薬剤を併用することで、より詳しく構造や機能を評価する場合もあります。
放射線の被ばくは検査部位や体格によっても異なりますが、腹部のCTの場合は10mGy程度です。これは、通常の生活をしているだけで浴びている“自然放射線”の約4倍量にあたりますが、必要な部位に限ってエックス線を当てていますし、その影響は無視できるレベルです。
CT検査では、造影剤という薬剤を使用する事があります。
一般的には血管の検査の場合や、炎症や腫瘍の存在が疑われる場合などに使われます。
CT検査で用いる造影剤は、ほとんどの場合ヨード(I)の化合物で、静脈内に直接投与されます。亜急性毒性、生殖器への作用なども問題ないとされ ています。副作用として、吐き気・嘔吐・熱感・じんましんなどが確認されていますが、発現率はそれらすべてを合わせても1~5%未満です(他の薬剤と同様、アレルギーの発現を完全に予測することは不可能です)。
この薬剤にアレルギーのある方や喘息の方、腎臓の機能に障害のある方などは、リスクが高いとされており注意が必要です。事前に、担当医師へご相談ください。
造影剤を実際に使うかどうかは、検査する部位やその目的と患者さまの状態を考慮して、担当医師や放射線科医師が決定しています。不明な点があれば、その都度ご相談ください。
2. CTの実際
CTは、比較的短時間に患者さまの負担も少なく身体の構造を詳細に知ることができるので、その適応は広く、全身に及びます。
2-a. 頭部CT
頭痛や各種神経症状、打撲などによる怪我などで、脳や頭蓋に病気が疑われる場合、よく行なわれます。
特に、頭蓋内出血に対する検出率は高いことが知られています。また、造影剤を使うことで、腫瘍や脳動脈瘤などの検出にも有用です。
2-b. 腹部CT
腹部には非常にたくさんの臓器があり、その構造も複雑です。
それら臓器の解剖や、病変の評価、検索にCTは非常に有用です。
左の画像は、上腹部造影CTの一断面像です。上側がおなか側、下側が背中側、向かって左が患者さまの右側になります。
向かって左(=患者さまの右側)に肝臓、中央に膵臓や大血管、右側に脾臓があります。また、下側(患者さまの背中側)の大きな白いものは胸椎(いわゆる背骨)です。
2-c. 腹部3D-CTA(3D-CT Angiography)
薄い断層画像をまとめて扱うことで3次元画像(立体像)を作成することが出来ます。それにより疾患と他臓器の関わり合いを視覚的につかむことが容易になり、手術などの治療に有効な画像を提供することが出来ます。
さらに、造影剤を注入しながら撮影する事で、血管や血流の豊富な臓器の構造を立体的・連続的に把握する事が出来ます。
また、一口に“3D”と言っても様々な画像処理・表示法があります。
検査目的や症例に応じて適切な処理を行います。
ボリュームレンダリング(VR)法による表示
一般的に3DというとこのVR画像の印象が強いようです。また、上下左右どの方向からでも観察可能です(ここでは正面から観察しています)。
この症例は右の腎動脈に動脈瘤が存在しています(赤矢印)。骨と臓器,血管を同時に表示する事で、それらの位置や構造が把握できます。
(上図から骨を除去し)動脈と腎臓を表示したもの。
さらに動脈のみ表示する事で、血管の走行や動脈瘤の形状が明瞭に把握できます。
最大値投影法(MIP)による表示
細かい血管の描出や血管内石灰化の程度を評価できます。
2-d. 頚部3D-CTA (3D-CT Angiography)
右内頚動脈狭窄のため、右内頚動脈血管拡張形成術+ステント(血管の太さを維持する為に挿入する筒状の金属)留置術を施行した方の画像です。
ボリュームレンダリング(VR)法による表示
頚部を正面から観察したものです。
右の頚動脈にステント(赤矢印)が確認できます
頚部を右斜め前から観察したものです。
ステント(赤矢印)の上下の血管において血流が良好に保たれている事が分かります。
上のVR画像をさらに処理し、骨成分の透明度を上げたものです。これにより骨に隠されていた血管を表示し、骨に対する血管の位置や走行を確認することができます。
血管解析画像
ステントが入った動脈の内側を観察できます。
左側は血管の走行に沿って表示したもので、右の4画像はこの血管の断面を表示したものです。
2-e. 冠動脈3D-CTA(心臓CT)
心電図を併用してCT撮影することにより、心臓を栄養する血管(冠動脈)の血行状態を把握することが出来ます。主に狭心症や心筋梗塞などの心疾患を疑う場合に行われます。
基本的には造影剤を注入しながらの検査となります。
撮影は数回ほど息を止めるだけですが、検査前に安静にして心電図の確認を行い、場合によっては脈拍を整える薬や血管を拡張させる薬などを使用することがあります。これらの処置を含めると検査時間は個人差により変化しますが、2時間程度かかる恐れがあります。
撮影時の息止めがうまく行えない場合や、脈拍が安定していない(高度の頻脈や期外収縮など)場合は、残念ながらこの検査は適していません。
また、石灰化が強い症例やステント(血管を広げるために血管内に固定する筒状の金属)がある場合は、その部分の評価が難しいことがあります。
撮影後には以下のような画像処理及び解析を30分(場合によっては1時間)以上かけて行います。
ボリュームレンダリング(VR)法による表示
心臓の形状や冠動脈の走行を把握しやすい観察方法です。
主要な血管については、それぞれ多断面再構成(MPR)法により、詳しく狭窄などの病変がないか解析します。
冠動脈はバリエーションも多く、血管の同定や処理には高度な知識と経験が必要となります。
2-f. 4DCT「血行動態や機能の診断」
320列CT(16cm)を使用してCT撮影することにより、血管の血行状態を把握することができます。主に血管奇形や腫瘍血管の検索に行われます。基本的には造影剤を注入しながらの検査(およそ30秒)となります。
撮影時の体制保持がうまく行えない場合は残念ながらこの検査は適していません。
撮影後には以下のような画像処理及び解析を30分程度かけて行います。
ボリュームレンダリング(VR)法による表示
赤が動脈 緑が腫瘍 水色が静脈 透かした骨と自由に組み合わせが出来ます
DSA(Digital Subtraction Angiography)した血管像も作成できます
3. CT検査を受ける患者さまへのお願い
- ある特定のペースメーカーを装着されている場合、それが撮影範囲にあると誤動作することが報告されています。頚部もしくは胸(腹)部の検査の場合に問題となりますので、装着されている場合は検査前に医師または担当技師にお伝えください。
- 撮影範囲に金属がある場合、その周囲の画質が低下します。そのため更衣をお願いしています(プラスチックのボタンなどは問題ありません)。
- 現在妊娠されている方、授乳中の方は検査前に医師または担当技師にご相談ください。
4. CT検査における放射線被ばくについて
放射線は現代の医療に欠かせませんが、短期間のうちに大量に浴びると身体への影響も問題となることがあります。ただし、通常、必要な検査等をお受けいただく場合は放射線の影響を心配する必要はありません。
放射線検査における被ばく線量の最適化プロセスを推進するためのツールに、診断参考レベル(DRLs)があります。(国単位で報告されています)
当院ではこの日本の診断参考レベルを放射線検査の指標として用いています。
活用としては、DRLsの値より高い場合は、適正な線量の見直しをし、低い場合は画質と診断能の担保が出来ているかを確認し、検査の被ばく線量の最適化を行っています。
参考)日本の診断参考レベル(DRLs)と当院との比較
頭部単純ルーチン : DRLs 77mGy 当院 58mGy
上腹部 ~ 骨盤相 : DRLs 18mGy 当院 10mGy