注目論文:ICUでIPA疑い例の約2割が既存定義では分類不能

呼吸器内科
ICUで侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)を疑って治療する患者の中には、既存の研究定義では分類できない症例がどの程度存在し、その分類が予後と関連するのか。本研究は、フランス48 ICUで全身性抗真菌薬を投与された成人371例を対象とした多施設後ろ向きコホート研究です。19%がEORTC/MSGERCまたはFUNDICUのいずれにも分類されず、90日死亡率は分類間で有意差を認めませんでした。死亡は年齢、SOFA、frailtyと独立して関連しており、ICUでは分類カテゴリーだけでなく患者背景と急性期重症度を踏まえたリスク評価の重要性が示唆されます。ただし、治療例を基盤とした研究デザインであり、既存定義の診断的価値がないことを示すものではありません。

Unclassifiable Invasive Pulmonary Aspergillosis in the Intensive Care Unit: Insights From a Multicenter, Retrospective Cohort Study in France (2022-2024)
集中治療室における分類不能の侵襲性肺アスペルギルス症:フランスの多施設後ろ向きコホート研究(2022-2024年)からの知見
Villa A, Painvin B, Hérault A, Bourgeois PM, Peiffer B, Cunat S, Vincent F, Juban L, Desmedt L, de Bony de Lavergne M, Caumartin M, Bounab R, Prez L, Dessajan J, Dhelft F, Mallet J, Pineton de Chambrun M, Fourcade G, Darreau C, de Marignan D, Louis G, Wallet F, Desgrouas M, Kamdem KV, Chraibi H, Reizine F, Urbina T, Botterel F, Lanternier F, Millon L, Nseir S, de Prost N; ASPIRE Study Group Collaborators; ASPIRE Study Group Collaborators.
Open Forum Infect Dis, 2026, 13(9), ofag519.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42682890/
背景:
侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)が疑われる患者は、古典的な免疫抑制を有さない場合も含め、ICUで治療される機会が増えています。しかし、現在の研究用定義であるEORTC/MSGERCおよびFUNDICUが、実際に治療されている症例をどの程度分類できるのか、またそれらの分類が死亡を予測するのかは明らかではありません。本研究では、IPA疑いで治療されたICU患者における分類状況と予後との関連を評価しました。

研究デザイン:
2022年1月から2024年7月までに、フランス48施設のICUでIPA疑いに対して全身性抗真菌薬を投与された成人を後ろ向きに組み入れました。患者をmodified EORTC/MSGERC probable IPA、FUNDICU probable IPA、分類不能の3群に分類しました。90日死亡との関連を多変量Cox回帰で解析し、患者集団の異質性について教師なしクラスタリングによる探索的解析を行いました。

結果:
治療を受けた371例のうち、217例(58%)がmodified EORTC/MSGERC、83例(22%)がFUNDICU、71例(19%)が分類不能でした。全体の90日死亡率は62%で、各群の死亡率はそれぞれ63%、63%、58%であり、有意差は認められませんでした(log-rank P=0.24)。調整解析でも、IPA分類は死亡と関連しませんでした。EORTCと比較したFUNDICUの調整ハザード比は0.86(95%CI 0.62–1.20)、分類不能群は0.89(95%CI 0.62–1.30)でした。一方、年齢は1歳上昇あたりaHR 1.03(95%CI 1.02–1.05)、SOFAスコアは1点上昇あたり1.06(1.03–1.10)、frailtyは1点上昇あたり1.17(1.07–1.30)で、いずれも90日死亡の独立した予測因子でした。探索的クラスタリングでは6つのphenotypeが同定され、90日死亡率は40〜80%でした。

結論:
IPA疑いで治療されたICU患者の約5人に1人は、EORTC/MSGERCまたはFUNDICUの定義では分類できませんでした。死亡は分類カテゴリーよりも、年齢、frailty、急性期重症度と強く関連しており、ICUに適した診断枠組みとリスク層別化を支持する結果でした。ただし、治療例を対象とした研究デザインであることを踏まえて解釈する必要があり、これらの結果は既存定義に診断的価値がないことを示すものではありません。