注目論文:Long COVIDに対するニルマトレルビル・リトナビル15日・25日投与―RECOVER-VITAL試験

呼吸器内科
Long COVIDの病態仮説の一つであるSARS-CoV-2の持続感染を標的に、抗ウイルス薬を長期間投与すると症状は改善するのでしょうか。RECOVER-VITALは、症状が12週以上持続する成人を対象に米国69施設で行われた第2相二重盲検RCTです。ニルマトレルビル・リトナビルを15日または25日投与しましたが、Day 90の主要評価項目は、認知、自律神経、運動のいずれのphenotypeでもプラセボに対する有意な改善を認めず、副次評価項目にも差はありませんでした。今回検討された3 phenotypeでは、長期抗ウイルス治療の有効性を支持する結果は得られませんでした。

Nirmatrelvir-ritonavir targeting viral persistence in post-COVID-19 condition (long COVID) in the USA (RECOVER-VITAL): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial.
米国のCOVID-19罹患後症状(Long COVID)におけるウイルス持続を標的としたニルマトレルビル・リトナビル:無作為化二重盲検プラセボ対照第2相RECOVER-VITAL試験
Baden LR, Shah NS, Liu STH, Cohen J, Moy J, Kumar A, McComsey GA, Chen P, Floris-Moore M, Singer NG, Fernandez I, Slandzicki AJ, Wiley Z, Kadl A, Kaminsky DA, Hsu H, Walker TA, Hope AA, Ostrosky-Zeichner L, Goldman JD, Peluso MJ, Patterson TF, Parthasarathy S, Mullington JM, Bolin P Jr, Jolley SE, Krishnan JA, Castro M, Hodder SL, Pemu P, Chu HY, Risbano MG, Jerath MR, Mylonakis E, Hurt RT, Alicic R, Azad NS, Sala MA, Harkins MS, Parsonnet J, Stafford N, Robinson P, Hussain S, Qiao X, Hawk ST, Lillestol M, Erdmann N, Gebo KA, Sudhindra P, Sassine J, Marshall GD, Chatterjee T, Morse CG, Kedar E, Stringer WW, Frontera JA, Jordan M, Blaskewicz C, Santana JL, Foot RA, Wongtrakool C, McCarthy MW, Mehari A, Amon A, Cohen AK, Jain N, Maughan C, Lindsay D, Olson R, Broderick S, Rowe P, O'Brien SM, Walt DR, Levy BD, Jason LA, Low PA, Shibao CA, Make B, Bateman L, Redline S, Knopman D, Hernandez AF, Nolen TL, Reist C, Berdan L, Whitley R, Zimmerman KO; RECOVER-VITAL Clinical Trial Group.
Lancet Infect Dis, 2026.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42673984/
背景:
SARS-CoV-2感染後急性期後遺症、一般にLong COVIDと呼ばれる病態は、重要な健康問題となっています。その病態機序は明らかではありませんが、有力な仮説の一つとしてウイルスの持続が挙げられています。本研究では、SARS-CoV-2抗ウイルス薬であるニルマトレルビル・リトナビルがLong COVIDの症状を改善するかを検討しました。

研究デザイン:
米国69施設で実施された無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験です。急性SARS-CoV-2感染後に、認知、自律神経、運動の3つの主要症状phenotypeのいずれかに関連する症状が12週以上持続している18歳以上の成人を対象としました。参加者には、同一phenotypeに属する中等度症状が2つ以上、またはphenotypeに関連する重度症状が1つ以上あることを求めました。30例のpermuted blockを用いて1:1:1に割り付け、①ニルマトレルビル300 mg+リトナビル100 mgを1日2回15日間投与後、10日間プラセボ、②同用量を25日間投与、③25日間のプラセボ・リトナビル投与としました。主要評価項目はDay 90における患者報告アウトカムの臨床的に有意な変化で、認知phenotypeではPROMIS Cognitive Function Short Form 8a、自律神経phenotypeではOrthostatic Hypotension Questionnaire question 1、運動phenotypeでは修正版DePaul Symptom Questionnaire Post-Exertional Malaise short formを用いました。副次評価項目はphenotypeごとのperformance measureでした。

結果:
2023年7月27日から2024年9月6日までに1,207例がスクリーニングされ、964例が無作為化されました。後に適格性がないと判明した4例と治療を開始しなかった1例を除く959例がmITT集団となり、認知phenotype 332例、自律神経phenotype 334例、運動phenotype 332例でした。年齢中央値は49歳(IQR 38~59)で、643例(67%)が女性、314例(33%)が男性でした。主要評価項目では、いずれのphenotypeでも統計学的に有意な利益は認められませんでした。認知phenotypeにおけるプラセボとの差は、25日投与で3.2%(95%CI −10.4~16.8、P=0.65)、15日投与で−2.2%(−15.5~11.1、P=0.74)でした。自律神経phenotypeでは、25日投与で−6.4%(−18.5~5.7、P=0.30)、15日投与で−0.1%(−12.5~12.3、P=0.99)でした。運動phenotypeでは、25日投与で−7.8%(−19.5~3.8、P=0.19)、15日投与で0.9%(−11.4~13.2、P=0.88)でした。副次評価項目にも群間差はありませんでした。新たな安全性シグナルは認められず、死亡例はありませんでした。研究期間中、963例中42例(4%)に計52件の重篤な有害事象が発生しました。

結論:
ニルマトレルビル・リトナビルの15日間または25日間投与は、検討されたLong COVIDの認知、自律神経、運動のいずれのphenotypeにおいても有効性を示すエビデンスは得られませんでした。Long COVIDの症状負担を評価し治療するためには、さらなるアプローチが必要であることが示唆されました。