注目論文:米国退役軍人における2024-2025年版新型コロナワクチンと主要心血管イベントリスクの減少

呼吸器内科
2024-2025年シーズンの新型コロナワクチンが主要心血管イベント(MACE)を減少させるかを検証した米国のコホート研究です。結果として、特に75歳以上の高齢者および基礎疾患を有する群でMACEリスクの有意な低下が認められました。注目すべきは、全原因MACEの絶対リスク減少が大きく、不顕性感染による心血管への悪影響をも防いでいる可能性が示唆された点です。私もワクチンの疫学的評価事業に携わっていますが、日本の日常診療においても、高齢者や高リスク患者に対するインフルエンザワクチンとの同時接種を強く推奨する重要なエビデンスとなります。

2024-2025 COVID-19 Vaccine and Major Adverse Cardiovascular Events Among US Veterans
米国退役軍人における2024-2025年版新型コロナワクチンと主要心血管イベント
Cai M, Xie Y, Al-Aly Z.
JAMA Intern Med. 2026 Jun 15:e261929.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42295793/
背景:
新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンは、主要心血管イベント(MACE)のリスクを低減することが以前に示されていました。変異株の進化や集団免疫が広範に獲得された現在の状況下において、2024-2025年版COVID-19ワクチンが引き続きCOVID-19関連のMACEを減少させるかどうかは不明です。本研究の目的は、2024-2025年版COVID-19ワクチンがCOVID-19関連MACEのリスク低減と関連しているかを明らかにすることです。

研究デザイン:
米国退役軍人省(VA)の電子カルテを用いた標的試験の模倣(target-trial emulation)によるコホート研究を実施しました。対象は、2024年9月3日から12月31日の間にワクチン接種歴のある退役軍人です。曝露は「2024-2025年版COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンの同日同時接種」対「インフルエンザワクチン単独接種」としました。主要評価項目は、COVID-19関連の心血管死、心筋梗塞、脳卒中、または心不全による入院を複合したCOVID-19関連MACEとしました。逆確率重み付け法を用いて、8ヶ月時点でのワクチンの有効性(VE:1マイナス相対リスクで算出)およびリスク差を推定しました。

結果:
インフルエンザワクチンを接種した1,039,659名(平均年齢70.1歳、男性91.8%)のうち、349,085名がCOVID-19ワクチンを接種し、690,574名が接種しませんでした。8ヶ月時点で、COVID-19ワクチンはCOVID-19関連MACEのリスク低下と関連していました(VE 37.7% [95% CI, 18.2%-54.9%];1万人あたりのリスク差 2.0)。COVID-19関連MACEに対するVEは75歳以上でのみ統計学的に有意であり(VE 50.7%)、この群で最大の絶対リスク減少(1万人あたり5.5件のイベント減少)を認めました。基礎疾患の有無に関わらず相対的なVEは有意でしたが、絶対的なベネフィットは基礎疾患を持つ患者で一貫してより大きいものでした。全原因MACE等の二次解析では、さらに大きな絶対リスク減少が示唆されました(全原因MACEのリスク差 23.7)。

結論:
本コホート研究において、2024-2025年版COVID-19ワクチンの接種はCOVID-19関連MACEのリスク低下と関連しており、その減少は75歳以上や基礎疾患を有する患者で最も顕著でした。COVID-19関連MACEの減少は控えめなものでしたが、全原因MACEの減少が大幅に大きかったことは、未検出のSARS-CoV-2感染とその続発症による隠れた負担にまでワクチンの保護的関連が及んでいることを示唆しています。