注目論文:閉塞性肺疾患における慢性的なプロトンポンプ阻害薬(PPI)使用と増悪リスク

呼吸器内科
閉塞性肺疾患(COPDや喘息など)患者への胃食道逆流症(GERD)合併は多く、実臨床でプロトンポンプ阻害薬(PPI)が処方される機会は頻繁にあります。本論文はベルギーの巨大なデータベースを用いた研究で、PPIの長期・累積使用が閉塞性肺疾患の増悪リスクを有意に、かつ用量依存的に上昇させることを示しました。

Exacerbation Risk by Chronic Proton Pump Inhibitor Use in Obstructive Lung Diseases
閉塞性肺疾患における慢性的なプロトンポンプ阻害薬使用による増悪リスク
Dehondt V, Van Vaerenbergh F, Verhamme K, Lahousse L.
Chest, 2026, Epub ahead of print.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41548651/
背景:
慢性閉塞性気道疾患(COAD)患者におけるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用と増悪リスクについては、これまでの研究で一貫性のない結果が示されています。

研究デザイン:
2017年から2022年の間にCOADの長期投薬を受けた成人患者に関するベルギーの全国的な請求ベースのデータを用いて、多変量CoxモデルによりPPI使用と増悪リスクの関連を調査しました。前年に調剤された規定日用量(DDD)に基づき、治療の逆確率重み付けCox回帰モデルによって用量依存的な関連を評価しました。

結果:
対象となったCOAD患者932,135人のうち、416,087人(44.6%)がPPI使用者であり、前年の投与量は57,540人(13.8%)が1〜28 DDD、128,017人(30.8%)が29〜180 DDD、127,981人(30.8%)が181〜365 DDD、102,549人(24.6%)が365 DDD超でした。年齢、性別、喫煙、社会経済的状況、増悪歴、短時間作用性気管支拡張薬の使用、フレイル、併存疾患を調整した結果、PPIの使用は増悪リスクの増加と関連していました(調整ハザード比[HR]1.18[95% CI、1.17-1.19])。さらに、PPIを使用しなかった患者と比較して、増悪リスクは累積DDDとともに増加しました(28 DDD以下:HR 1.09、180 DDD以下:HR 1.15、365 DDD以下:HR 1.19、365 DDD超:HR 1.25)。感度分析では、増悪リスクとの関連は、50歳未満、フレイルではない患者、理論的にPPI血漿濃度が上昇している患者で最も顕著であり、胃食道逆流症患者で短期間使用された場合は有意ではありませんでした。

結論:
閉塞性肺疾患患者における累積的なPPIの使用は、増悪リスクの増加と関連していました。この結果は、呼吸器診療の実臨床においてPPIの使用を慎重に検討する必要性を強調しています。