注目論文:慢性肺疾患の重症入院患者に対する院内インフルエンザワクチン接種の有用性

呼吸器内科
慢性肺疾患(CPD)の急性増悪等で重症管理を要した患者に対する「入院中の」インフルエンザワクチン接種が、退院後の1年死亡率や再入院リスクを有意に低下させることを示したターゲット・トライアル・エミュレーションです。我々呼吸器内科医は、退院時の処方調整や外来フォローアップに気を取られがちですが、入院期間中にワクチン接種を済ませてしまうことが、長期予後を改善する極めて有効かつ実践的なアプローチであることが示されました。

In-hospital influenza vaccination is associated with reduced 1-year mortality in critical patients with chronic pulmonary disease: a real world target trial emulation
慢性肺疾患の重症患者において入院中のインフルエンザワクチン接種は1年死亡率の低下と関連する:リアルワールドにおけるターゲット・トライアル・エミュレーション
Feng J, Xi F, Sun C, 他
CHEST, 2026, 0 (Epub ahead of print)
https://journal.chestnet.org/article/S0012-3692(26)00591-X/abstract?dgcid=raven_jbs_aip_email
背景:
インフルエンザワクチン接種は、脆弱な人々の死亡や重篤な疾患を予防するために広く推奨されているが、慢性肺疾患(CPD)の重症入院患者に対する院内でのインフルエンザワクチン接種は依然として限られている。

研究デザイン:
MIMIC-IVデータベース(2011~2022年)のCPD重症入院患者を用いたターゲット・トライアル・エミュレーション(標的試験の模倣)をデザインした。ベースライン特性を調整するために傾向スコアマッチングを用いた。主要有効性評価項目は1年死亡率とし、探索的安全性評価項目として接種後7日以内の発熱を設定した。死亡率との関連はCox比例ハザードモデルおよび加速寿命モデルを用いて評価し、再入院や救急外来(ED)受診はロジスティック回帰モデルを用いて評価した。ワクチン有効性(VE)は「(1-ハザード比またはオッズ比)×100」として推定し、治療必要数(NNV)を算出した。発熱に関する非劣性は、リスク差(RD)の95%信頼区間(CI)上限が5%未満であることと定義した。

結果:
患者7734名のうち、3803名(49.2%)がインフルエンザワクチンを接種した。ワクチン接種は1年死亡率の低下と関連しており(VE 12%、95% CI 3%–20%)、1名の死亡を予防するためのNNVは30(95% CI 18–119)であった。さらに、ワクチン接種群では90日死亡率が12%(95% CI 1%–21%)低く、再入院リスクが13%(95% CI 3%–22%)減少し、救急外来受診が23%(95% CI 12%–32%)減少した。事前に規定した非劣性基準に従い、ワクチン未接種群と比較した接種群における発熱発生率の非劣性が示された(RD 2.22%、95% CI -0.02%–4.47%)。

結論:
院内でのインフルエンザワクチン接種はCPDの重症患者に対して有効であり、長期予後を改善するためにルーチンの入院医療へ組み込むことを支持するものである。