注目論文:高齢入院患者におけるRSウイルス感染症とインフルエンザの臨床転帰の比較

呼吸器内科
高齢者のRSウイルス(RSV)感染症は、インフルエンザと同等以上に重篤化しうることが近年明らかになっています。本研究でも、入院を要した60歳以上のRSV患者における30日死亡率は11.9%と高く、頻脈性不整脈などの心血管合併症が多い点も臨床的に重要です。本邦でも高齢者に対するRSVワクチンが承認され実地臨床に導入されていますが、本研究結果はその積極的な接種を支持する強力なエビデンスとなります。冬季の呼吸器感染症診療において、インフルエンザや新型コロナに加えて、RSVへの警戒と予防啓発がますます求められます。
Clinical Outcomes Among Older Adults Hospitalized with Respiratory Syncytial Virus and Influenza Infection: A Retrospective Analysis
高齢入院患者におけるRSウイルス感染症とインフルエンザの臨床転帰:後方視的解析
Jurkowicz M, Margalit I, Harris I, Mazar D, Teper A, Royzman I, Uppal S, Liang C, Begier E, Ganiel I, Yahav D, Mandelboim M.
Infect Dis Ther. 2026, Epub ahead of print
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41886204/
背景:
RSウイルス(RSV)は高齢者において高い罹患率と死亡率をもたらす主要な原因です。RSVワクチンの接種戦略を導くため、特にインフルエンザと比較したRSVの転帰に関する情報は限られています。本研究は、2016年から2023年にイスラエルで入院した60歳以上の成人におけるRSV感染の特徴と臨床転帰の予測因子を明らかにし、その疾患の重症度と転帰を季節性インフルエンザによる入院と比較することを目的としました。

研究デザイン:
2016年から2023年の間に標準治療のRT-PCRでRSVまたはインフルエンザ陽性が確認された60歳以上の入院成人を対象に後方視的解析を実施しました。主要評価項目は、集中治療室(ICU)入室、人工呼吸器管理、昇圧剤の使用、または30日死亡の複合としました。心血管合併症も記録しました。交絡因子の調整には逆確率治療重み付け(IPTW)法を用い、重み付けおよび重み付けなしの相対リスク(RR)を推定して、RSVとインフルエンザの臨床転帰を比較しました。

結果:
RSV陽性患者817名およびインフルエンザ陽性患者2113名が含まれました。RSV患者において、30日および90日死亡率はそれぞれ11.9%および18.8%であり、10.6%がICU入室、6.4%が人工呼吸器管理、6.5%が昇圧剤の使用を必要としました。頻脈性不整脈が17.7%、虚血が9.9%で記録されました。複合主要評価項目の予測因子には、慢性肺疾患、下気道感染症、低体温、頻脈、低血圧、クレアチニン上昇が含まれました。IPTWで調整した解析では、RSV感染はインフルエンザと比較して、複合主要評価項目(RR 1.03、95% CI 1.00-1.06)および90日死亡(RR 1.02、95% CI 0.99-1.05)のリスクが増加する傾向を示しました。

結論:
入院した高齢者において、RSV感染症は高い罹患率および死亡率をもたらし、インフルエンザと比較して不良な臨床転帰のリスクが高い可能性があります。これらの知見は、高齢者におけるRSVワクチン接種プログラムの優先順位付けを支持するものです。