注目論文:日本の成人におけるRSウイルスおよびインフルエンザ関連入院の発生率(APSG-J2 study)

呼吸器内科
私自身も共同研究者として参画している、国内の成人肺炎に関する多施設前向き研究「APSG-J2」からの極めて重要な報告です。成人のRSウイルス(RSV)による疾病負荷はこれまで国内で過小評価されがちでしたが、本研究により85歳以上の超高齢者においてRSV関連の入院発生率が極めて高い(10万人年あたり150)ことが明らかになりました。近年、国内でも高齢者向けRSVワクチンが接種可能です。本データは、実臨床におけるRSVワクチンの費用対効果の検証や、今後の予防接種政策の最適化を図る上で、日本独自の不可欠なエビデンスとなります。
Incidence of RSV- and Influenza-Associated Hospitalizations With Community-Acquired Pneumonia and Other Acute Respiratory Infection Among Adults in Japan in 2022-2024: APSG-J2 Study
2022-2024年の日本における成人市中肺炎およびその他の急性呼吸器感染症に伴うRSウイルスおよびインフルエンザ関連入院の発生率:APSG-J2研究
Maeda H, Masuda S, Dhoubhadel BG, Fujita Y, Akiba Y, Nishigaki Y, Nakashima K, 他
Influenza Other Respir Viruses. 2026 Mar;20(3):e70238.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41833535/
背景:
成人におけるRSウイルス(RSV)の疾病負荷を定量化することはインフルエンザと比較して困難であり、日本における高齢者のデータは依然として乏しい状況です。RSVのワクチン接種政策を支援するためには、国別のエビデンスが不可欠です。

研究デザイン:
この多施設前向き研究(APSG-J2)は、2022年9月から2024年8月にかけて、日本の4つの医療圏にある7つの市中病院に入院した市中肺炎(CAP)およびその他の急性呼吸器感染症(ARI)の成人患者を対象としました。呼吸器検体はマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)キットを用いて解析し、RSVとインフルエンザを検出しました。研究データと国の統計を用いて、年齢および地域別に層別化し、RSVおよびインフルエンザに関連する入院の発生率を推定しました。

結果:
CAPまたはARIで入院した3,047名の患者のうち、1,499名(49.2%)がマルチプレックスPCR検査を受けました。RSVとインフルエンザは、検査を受けた患者のそれぞれ2.8%と3.3%から検出されました。65歳以上の成人におけるRSV関連CAP/ARI入院の発生率は、1年目と2年目でそれぞれ10万人年あたり29および36であり、85歳以上の患者ではさらに高い発生率(10万人年あたり150および131)を示しました。インフルエンザの発生率は2年目に著しく増加しており(65歳以上で10万人年あたり11から71へ)、これはCOVID-19後の感染伝播の変化を反映している可能性があります。

結論:
この多施設研究において、日本の成人におけるRSVおよびインフルエンザ関連の入院発生率を推定しました。その結果、発生率は年齢とともに上昇し、インフルエンザ関連の入院は2年目に増加したことが示されました。成人層におけるRSVの疾病負荷を正確に評価するためには、継続的なサーベイランスが不可欠です。