注目論文:特発性肺線維症(IPF)に対する吸入トレプロスチニルの有効性と安全性:TETON-2試験

呼吸器内科
肺高血圧症治療薬である吸入トレプロスチニルが、IPFのFVC低下を抑制したNEJM誌の第3相試験(TETON-2)です。約75%の患者が既存の抗線維化薬を併用している中で、52週時点で約100mLのFVC低下抑制効果(アドオン効果)を示した点は非常に有望な結果と言えます。一方で、IPF患者のQOLを著しく損なう「咳嗽」が約半数で認められ、有害事象による治療中止率の高さ(約34%)が実臨床における最大の障壁となる印象はあります。
Inhaled Treprostinil for Idiopathic Pulmonary Fibrosis
特発性肺線維症に対する吸入トレプロスチニル
Nathan SD, Smith P, Deng C, 他
N Engl J Med, 2026, Epub ahead of print
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41812190/
背景:
前臨床データから、吸入トレプロスチニルが抗線維化メカニズムを通じて特発性肺線維症(IPF)の治療に有用である可能性が示唆されており、この前提は臨床的観察によっても支持されている。

研究デザイン:
本第3相二重盲検試験において、IPF患者を吸入トレプロスチニル群またはプラセボ群(1日4回、1回12吸入)にランダムに割り付け、52週間投与した。主要評価項目は52週時点の絶対努力肺活量(FVC)のベースラインからの変化量とした。副次評価項目(多重性を調整するため事前に指定された順序で解析)は、臨床的悪化、IPFの急性増悪(それぞれTime-to-event解析で評価)、52週までの死亡、ならびに52週時点のFVC予測値パーセンテージ、QOL、および一酸化炭素肺拡散能(DLCO)のベースラインからの変化とした。安全性も併せて評価した。

結果:
合計593名がランダム化され、トレプロスチニル(298名)またはプラセボ(295名)を少なくとも1回投与された。ベースラインの平均年齢は71.7歳、男性80.1%、平均FVCは76.8%であり、75.4%が既存の抗線維化薬治療を受けていた。52週時点のFVC変化量の中央値は、トレプロスチニル群で-49.9 ml(95%信頼区間[CI]-79.2〜-19.5)、プラセボ群で-136.4 ml(95% CI -172.5〜-104.0)であり、群間差は95.6 mlであった(P<0.001)。臨床的悪化はトレプロスチニル群の81名(27.2%)、プラセボ群の115名(39.0%)で発生した(ハザード比 0.71、95% CI 0.53〜0.95、P=0.02)。IPF急性増悪までの期間に実質的な群間差は観察されず、その後の副次評価項目に関する推論は行われなかった。最も一般的な有害事象は咳嗽であり、トレプロスチニル群の48.3%、プラセボ群の24.1%で報告された。投与中止はそれぞれ33.6%と24.7%で発生し、その約半数が有害事象を主な中止理由としていた。

結論:
IPF患者において、吸入トレプロスチニルはプラセボと比較して52週間にわたるFVC低下の抑制および臨床的悪化イベントの減少と関連していた。