注目論文:成人におけるRSウイルス感染症の疾患負荷とワクチン導入の意義

呼吸器内科
成人、特に高齢者におけるRSウイルス(RSV)感染症の疾患負荷は、長らく過小評価されてきました。本研究は英国のプライマリケアにおけるデータですが、RSVの陽性率が新型コロナウイルスと同等であり、インフルエンザA型の約7割に達することを示しています。興味深いのは、RSVが典型的なインフルエンザ様疾患(ILI)を呈しにくいという点であり、臨床診断の難しさを浮き彫りにしています。本邦でも高齢者向けRSVワクチンが使用可能となっており、冬季の呼吸器感染症診療においてインフルエンザやCOVID-19と並んでRSVを鑑別に挙げ、ハイリスク者へのワクチン接種を検討する強力なエビデンスとなります。
Epidemiology of virologically confirmed RSV, influenza and COVID-19 in adults in England, 2023-2024: Primary Care Observational Study of Acute Respiratory Infection (ObservatARI)
英国の成人におけるウイルス学的に確定されたRSウイルス、インフルエンザ、およびCOVID-19の疫学(2023-2024年):急性呼吸器感染症のプライマリケア観察研究(ObservatARI)
Ordóñez-Mena JM, Radin JM, Hoang U, Araujo AB, Balogh O, Eltayeb A, Jamie G, Elson WH, Tianyi LU, Xinchun GU, Batool F, Madia J, Fan X, Byford R, Enesca E, Button E, Martin D, Ferreira F, Hoschler K, Kele B, Cogdale J, Talts T, Sebastian-Pillai P, Zambon M, de Lusignan S.
J Infect. 2026 Feb 21:106714.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41730510/
背景:
RSウイルス(RSV)ワクチンの導入に先立ち、成人のプライマリケア患者におけるRSVの陽性率、臨床像、および感染の予測因子を、インフルエンザやSARS-CoV-2と比較して明らかにすることを目的としました。

研究デザイン:
英国において急性呼吸器感染症を呈した40歳以上のプライマリケア患者のデータを解析しました。2023年10月2日から2024年4月10日までの間に採取されたスワブ検体を用い、英国健康安全局がRSV、インフルエンザA/B型、およびSARS-CoV-2のウイルス検査を実施しました。95%信頼区間(CI)を伴う陽性率を推定し、多変量ロジスティック回帰分析により感染の予測因子を特定し、臨床像を比較しました。

結果:
検査を受けた6,161名のうち、インフルエンザA型の陽性率が最も高く(3.25%、95% CI: 2.83-3.72)、次いでSARS-CoV-2(2.30%、95% CI: 1.96-2.71)、RSV(2.26%、95% CI: 1.91-2.66)、インフルエンザB型(0.28%、95% CI: 0.17-0.44)の順でした。RSVの陽性率は、40~49歳と比較して60~74歳でより高くなりました。また、RSV症例はCOVID-19やインフルエンザA型の症例と比較して、インフルエンザ様疾患(ILI)を呈する頻度が低いことがわかりました。

結論:
英国の2023/24年の冬季シーズンにおいて、医療機関を受診したRSV感染症は、SARS-CoV-2と同等かつインフルエンザの約70%に相当する陽性率を示し、重大な疾患負荷をもたらしていました。インフルエンザとCOVID-19のワクチン接種プログラムがすでに確立されていることを踏まえると、これらの知見は成人に対するRSVワクチン接種プログラムを推進する根拠となります。