注目論文:肺高血圧症における1分間椅子立ち上がりテスト(1-min STST)の長期的予後予測能

呼吸器内科
肺高血圧症(PH)の機能評価やリスク層別化には6分間歩行テスト(6MWT)が標準的ですが、30mの直線廊下が必要など、医療機関によっては、スペースの問題から実施ハードルがあります。本研究は、診察室でも省スペースで実施可能な「1分間椅子立ち上がりテスト(1-min STST)」が、PH患者の長期的予後(心不全入院、移植、死亡の複合)を予測できることを示しました。特に14回以下の群は予後不良であり、6MWTを補完する実用的な指標として有用です。日常診療のモニタリングに直結するエビデンスであり、施設要件で6MWTが困難な環境でも積極的な活用が期待されます。
Performance on the one-minute sit-to-stand test predicts long-term adverse outcomes in pulmonary hypertension 肺高血圧症における1分間椅子立ち上がりテストのパフォーマンスは長期的な有害事象を予測する Kronberger C, Mousavi RA, Ermolaev N, Poledniczek M, Schmid LM, Eslami M, Rassoulpour N, Kaya MB, Krall C, Litschauer B, Grzeda MT, McKenna I, Badr Eslam R. Sci Rep, 2026, 16(1), 6562.
背景:1分間椅子立ち上がりテスト(1-min STST)は機能的運動耐容能を評価する簡便で再現性の高い指標です。近年、肺高血圧症(PH)患者のリスク層別化において、ガイドラインで推奨される6分間歩行テスト(6MWT)の閾値と同等となる1-min STSTのカットオフ値が提案されています。しかし、長期転帰に対する1-min STSTの予後予測としての価値は依然として不明です。本研究の目的は、PH患者における1-min STSTのパフォーマンスと長期的な有害転帰との関連を評価することです。

研究デザイン: PH患者を前向きに連続登録し、1-min STSTと6MWTの両方を実施しました。主要評価項目は、心不全による入院、心肺移植、または全死因死亡の複合としました。1-min STSTのパフォーマンスと長期的な有害転帰との関連をCox回帰モデルを用いて評価しました。患者は、以前に報告された6MWTの閾値に一致する1-min STSTのカットオフ値(14回以下、15~19回、20回以上)に基づき3群に層別化されました。カプランマイヤー曲線を用いて群間のイベント発生率を比較しました。

結果:合計117名の患者(平均年齢66±14歳、女性56%)が含まれました。中央値2.7年[四分位範囲 1.0~3.9]の追跡期間中に、60名(51%)の患者が有害事象を経験しました。1-min STSTのパフォーマンス低下は、長期的な有害転帰のリスク上昇と有意に関連していました(1回あたりのハザード比:0.94、95%信頼区間:0.90~0.98、p < 0.001)。この関連は、年齢、性別、BMI、NT-proBNP値(調整ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.91~0.99、p=0.016)および主要な併存疾患(調整ハザード比:0.94、95%信頼区間:0.90~0.98、p=0.003)で調整した後も有意なままでした。カプランマイヤー解析では、立ち上がり回数が14回以下の患者において、長期転帰が有意に悪化することが示されました(log-rank p=0.001)。

結論:1-min STSTは、PH患者における長期的な有害事象の予測因子です。1-min STSTでの立ち上がり回数が14回以下であることは、長期的な有害転帰のリスクが有意に高いことを示しています。したがって、1-min STSTは日常の臨床診療におけるリスク層別化に活用できる可能性があります。