注目論文:米国成人外来における呼吸器疾患・心不全増悪時のRSV検査実施率の現状

呼吸器内科
RSV感染症はCOPDや心不全増悪の重要な誘因ですが、本研究が示す通り外来での検査率はインフルエンザに比べ依然として低値です。特異的な抗ウイルス薬が限られている点が実臨床での検査を躊躇させる一因と考えられますが、成人用RSVワクチンの登場や抗菌薬適正使用(ASP)の観点から、正確な病原診断の意義は高まっています。特に高齢者のCOPDや心不全の増悪時には、細菌感染や単なる体液貯留と決めつけず、鑑別診断の一つとしてRSVを積極的に疑う姿勢が求められます。
Outpatient RSV Testing Rates Among US Adults with Lower Respiratory Tract Disease, 2017-2024. 米国成人下気道疾患患者の外来におけるRSV検査率:2017-2024年 Perez KK, Date K, Aliabadi N, Judy J, Landi S, Chilson E, Gessner BD, Begier E. Infect Dis Ther. 2026 Jan 29. doi: 10.1007/s40121-026-01300-z.
背景:
成人におけるRSV感染症は、下気道感染症(LRTI)を引き起こすだけでなく、慢性閉塞性肺疾患(COPD)やうっ血性心不全(CHF)の増悪原因となります。しかし、これらの患者、特に外来患者におけるRSV検査の実施率については十分に実態が把握されていません。本研究では、LRTI、COPD増悪、またはCHF増悪で外来受診した米国成人におけるRSVおよびインフルエンザの検査実施状況を評価しました。

研究デザイン:
Optum®電子カルテ(EHR)データベースを用いた後ろ向きコホート研究を実施しました。2017年8月から2024年3月の間に、LRTI、COPD増悪、またはCHF増悪で外来受診した18歳以上の成人を対象とし、標準治療としてのRSVまたはインフルエンザ検査の実施率を定量化しました。

結果:
解析対象はLRTI外来受診2,208,009件、COPD増悪396,891件、CHF増悪422,648件でした。LRTI受診時のRSV検査率は2017年の0.6%から2024年には9.4%へと増加しましたが、インフルエンザ検査率(7.1-31.7%)と比較して依然として低い水準でした。COPDおよびCHF増悪時も同様の傾向が見られました。対象となった全LRTI外来受診のうち、RSV検査が行われたのは3%未満(60,265/2,208,009)であったのに対し、インフルエンザ検査は15%(333,232/2,208,009)で行われていました。疾患別では、COPD増悪(RSV 1.9%、インフルエンザ 6.0%)の方が、CHF増悪(RSV 0.5%、インフルエンザ 1.1%)よりも頻繁に検査されていました。

結論:
経時的な増加は見られるものの、米国成人外来患者におけるRSV検査は依然として頻度が低いのが現状です。これはRSVが鑑別診断に含まれるべきCOPDやCHF増悪患者においても特に顕著です。検査頻度の低さは、RSVに対する特異的な治療選択肢が不足している現状を反映している可能性があります。