注目論文:プライマリ・ケアにおけるナッジ介入によるインフルエンザワクチン接種率の向上

呼吸器内科
多忙な外来診療において、行動経済学(ナッジ)を用いたシステム介入がいかにワクチン接種率を改善させるかを示したJAMA Internal Medicineの重要な報告です。患者への事前通知に加え、医師に対する「オーダーの自動セット(pended order)」と「他医師との実績比較」を組み合わせることで、接種率が有意に約5%上昇しました。特に、医師が改めてオーダーを入れる手間を省くデフォルト化の効果は大きいと考えられます。一方で、高リスク群への双方向メッセージには上乗せ効果がなかったという結果も、コスト対効果の高いシステム構築を考える上で非常に示唆に富む知見です。
Nudges to Clinicians and Patients for Influenza Vaccines During Visits: The BE IMMUNE Randomized Clinical Trial 受診時のインフルエンザワクチン接種に対する臨床医および患者へのナッジ:BE IMMUNE無作為化臨床試験 Mehta SJ, Waddell KJ, Linn KA, et al. JAMA Intern Med. 2026 Jan 5:e257133
背景: 毎年のインフルエンザワクチン接種は高齢者の疾病負荷を軽減するが、その実施率は依然として不十分である。

研究デザイン: ペンシルベニア州とワシントン州のプライマリ・ケア48クリニックを対象とした「BE IMMUNE」実用的クラスター無作為化臨床試験。50歳以上でインフルエンザワクチン接種が必要な患者を対象とした。 クリニックを2:1で介入群と通常ケア群に割り付けた。 ・介入群:(1)患者への受診前テキストメッセージ通知、(2)電子カルテ上の自動オーダーセット(pended order)、(3)医師への月次ワクチン接種率フィードバック(他医師との比較)を実施。 ・さらに介入群内の高リスク患者に対し、双方向テキストメッセージか標準テキストかを無作為に割り付けた。

結果: 47クリニックの患者80,039名(平均年齢65.8歳)を解析した。介入群におけるワクチン接種完了率は31.4%であり、通常ケア群の26.4%と比較して有意に高かった(リスク差 5.1ポイント; 調整オッズ比 1.28 [97.5%CI 1.13-1.45]; P < .001)。なお、高リスク患者において、双方向テキストメッセージは標準メッセージと比較して有意な上乗せ効果を示さなかった。

結論: 本試験において、複合的なナッジ介入はプライマリ・ケア受診時のインフルエンザワクチン接種率を有意に向上させた。双方向のメッセージ機能は高リスク群においてさらなる接種率向上には寄与しなかった。