注目論文:嚢胞性線維症・気管支拡張症の肺移植:合併するPHが予後に与える「時間依存的」な影響

呼吸器内科
肺移植待機リストにおける嚢胞性線維症(CF)と非CF気管支拡張症(n-CFB)の肺高血圧症(PH)合併率は予想以上に高率でした。特に興味深いのはCFにおける「PH合併例の方が移植早期の生存率が良い」というパラドキシカルな結果です。重症度に応じた周術期管理の介入強度が影響している可能性がありますが、長期的には予後不良となる点は注意が必要です。日本ではCFは稀でn-CFBの移植適応検討の機会の方が多いですが、n-CFBではPHの有無が移植後生存率に有意な影響を与えないというデータは、移植適応判断における重要な知見と言えます。
Pulmonary hypertension prevalence and significance in lung transplant recipients with cystic fibrosis and non-cystic fibrosis bronchiectasis 肺移植レシピエントにおける嚢胞性線維症および非嚢胞性線維症性気管支拡張症に伴う肺高血圧症の有病率と意義 Chandel A, et al. CHEST, 2026 (In Press)
背景: 肺高血圧症(PH)は、進行した嚢胞性線維症(CF)および非嚢胞性線維症性気管支拡張症(n-CFB)の合併症です。しかし、CFおよびn-CFBにおけるPHの有病率や移植後の予後予測的意義については、十分に明らかになっていませんでした。

研究デザイン: 2013年から2024年の間に肺移植リストに登録され、右心カテーテル検査(RHC)データのあるCFまたはn-CFB患者を対象としました。PHは第7回PHワールドシンポジウムの基準に従って定義されました。生存解析には、非比例ハザードおよび競合リスクを考慮した時間依存性共変量を用いたFine-Grayモデルを使用しました。

結果: コホートには、移植前RHCデータを有するCF患者1,273名とn-CFB患者377名が含まれました。PHは両疾患で頻繁に認められましたが、n-CFB(46%)よりもCF(60%)でより高率でした(p<0.001)。 CF患者において、PH合併は移植早期の死亡率低下と関連していましたが(sHR: 0.7 [95% CI: 0.5–0.9])、経時的にハザード比は上昇し(相互作用 sHR: 1.4 [95% CI: 1.1–1.9])、移植後3年以降の予後は悪化しました。対照的に、n-CFB患者では、PHの有無は移植後の生存率と有意な関連を示しませんでした(sHR: 0.8 [95% CI: 0.5–1.3])。

結論: 肺移植リストに登録された進行期CFおよびn-CFB患者において、前毛細血管性PHは一般的であり、特にCFで高率でした。CFコホートにおいて、PHは一見パラドキシカルに移植早期の生存率改善と関連していましたが、長期的には生存率の低下が見られました。これらの知見は、CFにおけるPHと移植予後の間に複雑かつ時間依存的な関係があることを示唆しており、特にCFTR修飾薬治療の文脈においてさらなる調査が必要です。