注目論文:ICU院内呼吸器感染症における緑膿菌の有病率とリスク因子解析

呼吸器内科
ICUでの院内呼吸器感染症(NRI)において、緑膿菌カバーを「とりあえず」行うことは日常診療でよく見受けられます。しかし本研究では緑膿菌の検出率は14.5%に留まり、多くの症例でエンピリックな抗緑膿菌薬投与が過剰に行われている可能性が示唆されました。 特筆すべきは、COPD(特にGold D)、自己免疫疾患、慢性腎臓病、急性腎障害といった具体的なリスク因子が同定された点です。これらの因子がない患者群では、抗緑膿菌薬の開始を慎重にする、あるいは培養陰性確認後の早期デエスカレーションを積極的に行う根拠となり得ます。抗菌薬適正使用(Stewardship)の観点からも非常に実用的なデータです。
Pseudomonas aeruginosa in patients with Nosocomial Respiratory Infections: A secondary analysis of the European Network for ICU-Related Respiratory Infections (ENIRRIs) 院内呼吸器感染症患者における緑膿菌:欧州ICU関連呼吸器感染症ネットワーク(ENIRRIs)の二次解析 Serrano-Mayorga CC, Olivella-Gomez J, Sanabria-Herrera N, et al. Chest. 2026 Jan 9:S0012-3692(26)00005-X
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41520818/

背景: 院内呼吸器感染症(NRI)はICU患者における最も一般的な合併症であり、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が頻繁に同定されます。しかし、その世界的な有病率や関連するリスク因子については不明な点が残されています。

研究デザイン: 2016年5月から2019年8月にかけて12カ国で実施された前向きコホート研究である「欧州ICU関連呼吸器感染症ネットワーク(ENIRRI)」のデータを用いた二次解析を行いました。微生物学的検査を受けたNRI患者1,059名のデータを解析し、LASSO回帰やランダムフォレストなどの多変量解析を用いてリスク因子を検討しました。

結果: 患者の年齢中央値は64歳で、緑膿菌は14.5%(153例)で検出されました。そのうち19.6%が多剤耐性(MDR)であり、11.1%がカルバペネメース産生菌でした。人工呼吸器関連肺炎(VAP)が診断の66%を占めました。 重要な知見として、多くの患者が緑膿菌感染が確定していないにもかかわらず、エンピリックに抗緑膿菌治療を受けていました。 緑膿菌NRIの主なリスク因子として、COPD Gold D、自己免疫疾患、慢性腎臓病(CKD)、および入室初日の急性腎障害(AKI)が特定されました。なお、緑膿菌の有無による死亡率に有意差は認められませんでした。

結論: 緑膿菌は主要なNRI起炎菌ですが、その有病率は国によって異なります。緑膿菌が確定していないにもかかわらず、高頻度で抗緑膿菌治療が行われていました。特定されたリスク因子(重症COPD、自己免疫疾患、腎疾患等)に基づき、より個別化された根拠に基づくエンピリック治療が必要です。