注目論文:妊娠中の喘息増悪パターンと吸入ステロイド減量のリスク

呼吸器内科
妊娠中に、吸入ステロイド(ICS)を減量することのリスクを、本研究は定量的に示しています。英国の4万人超のデータにおいて、約3割の妊婦がICSを減量しており、それが増悪の独立した強力なリスク因子(OR 2.29)となっていました。興味深いのは、妊娠中に全体の増悪数は減少した一方で、入院を要するような重篤な増悪は妊娠中期〜後期にかけて増加した点です。妊娠中こそICS継続によるコントロール維持が母子ともに安全であるという、患者指導に直結する重要なエビデンスです。
Pregnancy, asthma and exacerbations: a population-based cohort
妊娠、喘息および増悪:集団ベースコホート
Lee B, Wong E, Tan T, Rupani H, Bloom CI.
Eur Respir J. 2025 Dec 18;66(6):2501327.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40876965/
背景: 妊娠中の喘息増悪は、母体および周産期の予後不良と関連しています。健康転帰を改善するためには、修正可能なリスク因子を特定することが不可欠です。本研究は、妊娠中の増悪パターンを記述し、特に吸入ステロイド(ICS)の使用状況といった修正可能な因子を含む増悪のリスク因子を特定することを目的としました。

研究デザイン: 英国のプライマリケアおよび病院データ(2004〜2020年)を用いたコホート研究を実施し、喘息を有する妊婦を特定しました。増悪は、経口ステロイドの短期投与、救急外来受診、または予定外の入院と定義しました。多変量ロジスティック回帰分析を用い、母体の特性と増悪(主要評価項目)およびICS使用(副次評価項目)との関連を評価しました。

結果: 喘息を有する妊婦40,196人のうち、妊娠中の総増悪数は約30%減少しました。しかし、入院を伴う増悪は妊娠第2・第3三半期に30〜45%増加し、分娩後に急激に減少しました。ICSの処方は、妊娠中に31%の女性で減少していました。ICS使用の減少は、妊娠前のコントロール不良、年齢、民族、喫煙と関連していました。最も強力な増悪リスク因子は、増悪の既往(調整オッズ比 [OR] 4.09、95%信頼区間 [CI] 3.81-4.39)、妊娠中のICS使用減少(調整OR 2.29、95% CI 2.12-2.47)、および妊娠前にICSに加え別の長期管理薬を年間4回以上処方されていたこと(調整OR 2.11、95% CI 1.87-2.37)でした。その他のリスク因子には、血中好酸球増多、喫煙、肥満が含まれました。

結論: 妊娠中に総増悪数は減少したものの、入院を伴う重篤な増悪は増加しました。3分の1の女性が妊娠中にICS使用を減らしていましたが、これは2番目に大きな増悪リスク因子であり、かつ完全に修正可能なものです。他の主要なリスク因子として2型炎症があり、さらに妊娠前のコントロール不良も修正可能なリスク因子として挙げられました。