注目論文:妊娠中の吸入ステロイド使用は乳児の肺機能を守る

呼吸器内科
妊娠した場合「薬による胎児への影響」を懸念して、吸入ステロイド(ICS)が使いづらいと感じる場合があります。しかし、本研究はICS使用が乳児の肺機能低下を防ぎ、健常な母親から生まれた乳児と同等の肺機能レベルを維持することを示唆しています。「薬を使うリスク」よりも「喘息をコントロールしないリスク」の方が高いことは定説ですが、さらに「薬を使うことで赤ちゃんの肺を守れる」という積極的なメリットを説明できる点で、臨床的に非常に勇気づけられる報告です。妊婦さんへの服薬指導における強力なエビデンスとなるでしょう。
Association between maternal asthma and impaired infant lung function is diminished by inhaled corticosteroid use in pregnancy
母親の喘息と乳児の肺機能障害との関連は、妊娠中の吸入ステロイド使用によって軽減される
Martins Costa Gomes G, Collison AM, Karmaus WJJ, Da Silva Sena CR, Murphy VE, Brew BK, Grace T, Robinson PD, Sly PD, Frey U, Latzin P, Wyler F, Pennell CE, Gibson PG, Mattes J.
Thorax. 2025 Nov 9:thorax-2025-223539.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41207792/
背景: 喘息の母親から生まれた乳児は、生後早期の肺機能が低下していることが知られていますが、その理由は完全には解明されていません。妊娠中の吸入ステロイド(ICS)使用と出生児の肺機能との関連については、これまで十分に調査されていませんでした。

研究デザイン: 妊娠中のICS使用と生後4〜6週時点での乳児肺機能(安静換気フローボリュームループおよび機能的残気量[FRC])との関連を調べるため、多変量回帰分析を行いました。

結果: 喘息の母親から生まれた乳児において、呼気時間に対するピーク呼気到達時間の比(tPTEF:tE)を呼気終末肺気量(FRC)で補正した値は、妊娠中にICSを使用していなかった母親の乳児(n=25)と比較して、ICSを使用していた母親の乳児(n=161)で有意に良好でした(係数 0.06 /mL, 95% CI 0.01 to 0.11, p=0.014)。 非喘息の母親から生まれた乳児(対照群)と比較すると、ICSを使用しなかった喘息母親の乳児ではtPTEF:tE/FRC比が有意に低値でしたが(p=0.012)、ICSを使用していた喘息母親の乳児では対照群との間に有意差は認められませんでした(p=0.453)。つまり、ICS使用群では肺機能が保たれていました。

結論: 母親の喘息に関連する乳児の肺機能障害は、妊娠中に母親がICSを使用していた場合、軽減されることが示されました。