注目論文:日本の高齢者RSVワクチン接種率はわずか4.2% - JACSIS研究

呼吸器内科
日本国内の実態を映し出す重要なデータです。60歳以上を対象とした2024年のインターネット調査(JACSIS)において、RSVワクチンの接種率はわずか4.2%にとどまりました。COPDや糖尿病などの基礎疾患がある層や、インフルエンザワクチン接種者では接種率が高い傾向にありましたが、最も強力な関連因子は「知識(対象者や重症度を知っていること)」でした。特に「自分が対象であることを知っている」場合のオッズ比は5.75倍と極めて高く、費用対効果の議論の前に、まず「知られていない」という認知の壁が最大の課題であることが浮き彫りになりました。
Factors associated with respiratory syncytial virus vaccination among Japanese adults aged 60 years and older: an internet-based cross-sectional study 日本の60歳以上成人におけるRSVワクチン接種に関連する因子:インターネットベースの横断研究 Noguchi S, Ishimaru T, Yatera K, Machida M, Furuse Y, Fujino Y, Tabuchi T. Vaccine. 2025 Dec 15;71:128114.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41401602/
背景: RSV(呼吸器合胞体ウイルス)は乳幼児だけでなく高齢者にとっても一般的な病原体です。近年、60歳以上の成人向けにRSVワクチンが承認され、高い有効性が示されています。しかし、高齢者におけるRSVワクチンの接種状況に関するデータは限られています。本研究は、60歳以上の成人におけるRSVワクチン接種に関連する潜在的な因子を特定することを目的としました。

研究デザイン: 2024年の「日本における新型コロナウイルス対策と社会経済活動に関する調査(JACSIS)」の回答者28,000人のデータから、60歳以上の参加者のデータを抽出しました。RSVワクチン接種状況と潜在的な因子(年齢、性別、婚姻状況、居住形態、世帯収入、学歴、就労状況、併存疾患、COVID-19/インフルエンザワクチン接種状況、RSVおよびそのワクチンに関する知識)との関連を、単変量および多変量解析を用いて評価しました。

結果: 解析対象となった8,300人の参加者のうち、RSVワクチンを接種していたのは349人(4.2%)でした。調整後の解析では、高齢(80-84歳:調整オッズ比[aOR] 3.79)、2人以上での同居(aOR 1.63)、糖尿病(aOR 1.59)、脳卒中(aOR 2.29)、COPD(aOR 3.00)、およびCOVID-19(aOR 2.38)やインフルエンザ(aOR 2.03)のワクチン接種歴が、RSVワクチン接種率の上昇と有意に関連していました。さらに、臨床像(aOR 2.37)、疾患の重症度(aOR 3.50)、およびワクチン接種適応(aOR 5.75)に関する知識が高いほど、接種率が高いことが示されました。

結論: 特定のハイリスク群の高齢者においてはRSVワクチンの接種率が高い傾向にありました。しかし、全体的な接種率は依然として低く、さらなる教育および啓発活動への取り組みが必要です。