注目論文:世界の下気道感染症負荷2023(GBD研究)

呼吸器内科
世界最大規模の疫学研究GBDの最新版です。小児の肺炎死亡率はワクチン普及等により改善傾向ですが、高齢者における減少幅は鈍化しており、世界的な人口高齢化に伴う「肺炎対策のシフト」が必要であることを痛感させられます。病原体別では依然として肺炎球菌が最多ですが、黄色ブドウ球菌やクレブシエラが上位を占め、さらに今回新たにNTM(非結核性抗酸菌)やアスペルギルスの寄与度が可視化された点は、我々呼吸器内科医の実感とも合致します。成人・高齢者へのワクチン戦略強化と、難治性病原体への新たなアプローチが急務です。
Global burden of lower respiratory infections and aetiologies, 1990-2023: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2023 下気道感染症およびその病因による世界的負荷、1990-2023年:世界疾病負担研究(GBD)2023のシステマティック分析 GBD 2023 Lower Respiratory Infections and Antimicrobial Resistance Collaborators. Lancet Infect Dis. 2025 Dec 15:S1473-3099(25)00689-9
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41412141/
背景: 下気道感染症(LRI)は依然として世界における感染症死因の第1位です。本研究はGBD 2023の分析であり、1990年から2023年までの204の国と地域におけるLRIの罹患率、死亡率、障害調整生命年(DALY)を、新たにモデル化された11種を含む26の病原体別に推定しました。また、5歳未満児の肺炎死亡に関するGAPPD目標(2025年)への進捗も評価しました。

研究デザイン: LRIによる死亡(医師診断による肺炎または細気管支炎)をCause of Death Ensemble modelを用いて推定しました。罹患率はベイジアンメタ回帰ツールDisMod-MR 2.1を用いてモデル化しました。病原体別の致死率(CFR)をモデル化し、ウイルス、真菌、寄生虫、細菌性病原体に起因する割合を算出しました。

結果: 2023年において、LRIは250万人の死亡と9,870万DALYの原因となりました。負荷は5歳未満児と70歳以上の高齢者に集中していました。5歳未満児のLRI死亡率は2010年以降33.4%低下しましたが、70歳以上の成人ではわずかな低下にとどまりました。 病原体別では、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)が依然として最多(全LRI死亡の25.3%)で、次いで黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、10.9%)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae、9.1%)でした。新たにモデル化された病原体の中では、非結核性抗酸菌(NTM:17.7万人の死亡に関与)とアスペルギルス属(Aspergillus spp:6.78万人の死亡に関与)が重要な寄与因子として浮上しました。

結論: ワクチンによる成果は見られるものの、LRI制御には課題が残っています。特にサハラ以南のアフリカにおける高い死亡率や、高齢化に伴う高齢者の脆弱性への対処が急務です。肺炎球菌に加え、NTMや真菌などの病原体サーベイランスの拡大や、成人予防接種プログラムの強化が求められます。