注目論文:気管支鏡検査時のNOAC休薬と出血リスクの安全性評価
呼吸器内科
気管支鏡検査前のNOAC(DOAC)休薬は、我々呼吸器内科医にとって日常的ながら神経を使う判断です。本研究は、適切な休薬期間(半減期に基づく)を設けることで、アスピリン内服群や抗血栓薬なしの群と比較しても出血リスクが増加せず、血栓塞栓症も発生しなかったことを示す心強い実臨床データです。特筆すべきは、出血例のほとんどが肺癌や間質性肺炎症例であった点であり、薬剤だけでなく原疾患による組織の脆弱性も考慮する必要があります。ガイドライン遵守の重要性を再確認させる一報であり、検査前の休薬指導の裏付けとして有用です。
Evaluation of Treatment Adjustments and the Impact of Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants on Complications in Patients Undergoing Diagnostic Bronchoscopy
診断的気管支鏡検査を受ける患者における治療調整の評価および非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)が合併症に及ぼす影響
Malovrh MM, Bitežnik B, Adamič K, Rozman A.
Respiration. 2025;104(12):950-955
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40875737/
診断的気管支鏡検査を受ける患者における治療調整の評価および非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)が合併症に及ぼす影響
Malovrh MM, Bitežnik B, Adamič K, Rozman A.
Respiration. 2025;104(12):950-955
背景: 非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)は、気管支鏡検査などの侵襲的手技において出血リスクを増加させます。このリスクを軽減するため、通常NOACは検査前に休薬されます。現在の休薬に関するガイドラインは、薬物の半減期や類似の侵襲的手技からの推奨に基づいています。本研究は、気管支鏡検査前のNOAC休薬に関する施設内プロトコルの安全性を評価することを目的としました。
研究デザイン: 2023年に侵襲的検体採取を伴う気管支鏡検査を受けたNOAC内服患者を対象に、後ろ向き調査を実施しました。出血リスクが高い手技の前には、施設内ガイドラインに従いNOACを休薬しました。気管支鏡検査中の出血事例および血栓塞栓イベントを記録し、アセチルサリチル酸(ASA)内服群75名、および抗凝固薬・抗血小板薬(ACT/APT)内服なしの群77名と比較しました。
結果: 2023年に気管支鏡検査を受けた1,300名のうち、100名がNOACを内服していました(リバーロキサバン48名、アピキサバン36名、ダビガトラン12名、エドキサバン4名)。侵襲的検体採取(経気管支生検49例、気管支生検12例、EBUS-TBNA 42例、従来のTBNA 18例)が行われた75名を解析対象としました。軽度〜中等度の出血は、NOAC群の75名中9名(12%)、ASA群の75名中11名(14.7%)、内服なし群の77名中7名(9.1%)に発生しました。出血は1例を除き、肺癌(n=16)または間質性肺疾患(n=10)の患者で認められました。出血と年齢、血小板数、INR値との間に有意な関連はありませんでした。いずれの群においても重度の出血や血栓塞栓イベントは報告されませんでした。
結論: 気管支鏡検査前のNOAC休薬に関する地域の推奨事項に従うことは、合併症を最小限に抑え、侵襲的手技中の患者の安全を確保するために有効です。
研究デザイン: 2023年に侵襲的検体採取を伴う気管支鏡検査を受けたNOAC内服患者を対象に、後ろ向き調査を実施しました。出血リスクが高い手技の前には、施設内ガイドラインに従いNOACを休薬しました。気管支鏡検査中の出血事例および血栓塞栓イベントを記録し、アセチルサリチル酸(ASA)内服群75名、および抗凝固薬・抗血小板薬(ACT/APT)内服なしの群77名と比較しました。
結果: 2023年に気管支鏡検査を受けた1,300名のうち、100名がNOACを内服していました(リバーロキサバン48名、アピキサバン36名、ダビガトラン12名、エドキサバン4名)。侵襲的検体採取(経気管支生検49例、気管支生検12例、EBUS-TBNA 42例、従来のTBNA 18例)が行われた75名を解析対象としました。軽度〜中等度の出血は、NOAC群の75名中9名(12%)、ASA群の75名中11名(14.7%)、内服なし群の77名中7名(9.1%)に発生しました。出血は1例を除き、肺癌(n=16)または間質性肺疾患(n=10)の患者で認められました。出血と年齢、血小板数、INR値との間に有意な関連はありませんでした。いずれの群においても重度の出血や血栓塞栓イベントは報告されませんでした。
結論: 気管支鏡検査前のNOAC休薬に関する地域の推奨事項に従うことは、合併症を最小限に抑え、侵襲的手技中の患者の安全を確保するために有効です。