注目論文:Long COVIDの病態生理における持続的炎症と免疫枯渇の関与

呼吸器内科
Long COVID(LC)の病態解明に迫る重要な報告です。LC患者では感染後180日以上経過してもJAK-STAT、IL-6、補体などの炎症経路が活性化し、T細胞疲弊が持続していることがNature Immunology誌に示されました。臨床現場ではLCの症状が不定愁訴と捉えられがちですが、こうした生物学的基盤がマルチオミクス解析で解明されることは、患者への病状説明において非常に有用です。また、JAK-STAT経路やIL-6などの具体的なターゲットが同定されたことで、既存薬の転用を含む今後の治療開発への期待が高まります。
Long COVID involves activation of proinflammatory and immune exhaustion pathways Long COVIDは炎症性および免疫枯渇経路の活性化を伴う Aid M, Boero-Teyssier V, McMahan K, et al. Nat Immunol. 2025 Dec 12. doi: 10.1038/s41590-025-02353-x.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41388153/
背景: Long COVID(LC)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の急性感染後に慢性的な症状が続く病態を含みます。LCの発症機序に関する現在の仮説には、ウイルスの持続感染、組織損傷、自己免疫、内分泌不全、免疫機能不全、および補体の活性化などが挙げられています。

研究デザイン: 2020年から2021年にかけて、未感染対照群(35例)、急性感染者(54例)、回復期対照群(24例)、LC患者(28例)を含む142名のコホートを対象に、免疫学的、ウイルス学的、トランスクリプトーム、およびプロテオーム解析を実施しました。さらに、2023年から2024年に登録された第2コホート(回復期対照群20例、LC患者18例)においても同様の検討を行いました。

結果: LC群では回復期対照群と比較して、初感染から180日以上経過しても持続的な免疫活性化と炎症反応により特徴づけられました。具体的には、JAK-STAT、インターロイキン-6(IL-6)、補体、代謝、およびT細胞疲弊経路のアップレギュレーションが認められました。同様の所見は第2コホートでも観察されました。

結論: 本データは、LCが慢性炎症経路の持続的な活性化によって特徴づけられることを示唆しており、疾患の新たな治療標的および潜在的なバイオマーカーとなる可能性があります。