注目論文:肺基礎疾患を有する肺癌患者のICI肺炎リスク(ILD vs COPD)
呼吸器内科
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用する際、間質性肺炎(ILD)合併例がハイリスクであることは周知の事実ですが、COPD合併例との直接比較は臨床的に非常に興味深いです。TriNetXを用いた大規模解析により、ILD合併例はCIP(薬剤性肺炎)の発症率が対照群の約3倍(4.6%)であり、再発率や死亡率も有意に高いことが再確認されました。一方で、COPD群のリスク(1.9%)は対照群(1.5%)と大差ないという結果は重要です。COPD単独であれば過度にICIを恐れる必要はないことを示唆しており、治療方針決定の大きな後押しとなるデータです。
Checkpoint Inhibitor Pneumonitis in Non-Small Cell Lung Cancer With Chronic Lung Disease: A Comparative Study of ILD, COPD, and the General Population Using a Global Federated Database
慢性肺疾患を合併する非小細胞肺癌におけるチェックポイント阻害薬肺炎:世界的な連合データベースを用いたILD、COPD、および一般集団の比較研究
Maule G, Abuassi M, Sircar S, Hashim H, Augustus A, Alzghoul H, Beacher J, Harden C.
Respirology. 2025 Dec 10. doi: 10.1002/resp.70180.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41371776/
慢性肺疾患を合併する非小細胞肺癌におけるチェックポイント阻害薬肺炎:世界的な連合データベースを用いたILD、COPD、および一般集団の比較研究
Maule G, Abuassi M, Sircar S, Hashim H, Augustus A, Alzghoul H, Beacher J, Harden C.
Respirology. 2025 Dec 10. doi: 10.1002/resp.70180.
背景: チェックポイント阻害薬肺炎(CIP)は重篤な免疫関連有害事象です。間質性肺疾患(ILD)または慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者はリスクが高い可能性がありますが、これらの集団を比較したデータは限られています。本研究は、ILD、COPD、および既存の肺疾患がない患者におけるCIPの発生率、発症時期、再発、および転帰の違いを評価することを目的としました。
研究デザイン: TriNetXリサーチネットワークを使用したコホート研究を実施し、2017年1月から2023年1月の間に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与された患者を特定しました。患者をILD群、COPD群、対照群に層別化し、ICDコードを用いてCIPを特定しました。ベースライン特性を調整するために傾向スコアマッチング(1:1:1)を行いました。
結果: 184,000人以上のICI投与患者のうち、マッチング後各群3,147人を解析しました。CIP発生率は、COPD群(1.9%)および対照群(1.5%)と比較して、ILD群(4.6%)で最も高くなりました(p < 0.001)。CIP発症までの期間は各群で同様でした。CIPを発症したILD患者は、COPD群および対照群と比較して、再発率が高く(16.4% vs 9.1%, 8.3%)、全原因入院率も高く(61% vs 40%, 39%)、全死亡率も高い(41.1%)結果でした。
結論: ILDはCIPの発症リスクを有意に増加させ、再発や死亡を含む関連転帰を悪化させます。これらの知見は、基礎にILDを有するICI治療患者において、より厳密な監視とリスク層別化が必要であることを支持しています。
研究デザイン: TriNetXリサーチネットワークを使用したコホート研究を実施し、2017年1月から2023年1月の間に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与された患者を特定しました。患者をILD群、COPD群、対照群に層別化し、ICDコードを用いてCIPを特定しました。ベースライン特性を調整するために傾向スコアマッチング(1:1:1)を行いました。
結果: 184,000人以上のICI投与患者のうち、マッチング後各群3,147人を解析しました。CIP発生率は、COPD群(1.9%)および対照群(1.5%)と比較して、ILD群(4.6%)で最も高くなりました(p < 0.001)。CIP発症までの期間は各群で同様でした。CIPを発症したILD患者は、COPD群および対照群と比較して、再発率が高く(16.4% vs 9.1%, 8.3%)、全原因入院率も高く(61% vs 40%, 39%)、全死亡率も高い(41.1%)結果でした。
結論: ILDはCIPの発症リスクを有意に増加させ、再発や死亡を含む関連転帰を悪化させます。これらの知見は、基礎にILDを有するICI治療患者において、より厳密な監視とリスク層別化が必要であることを支持しています。