注目論文:高齢COPD患者の吸入アドヒアランスを阻む「身体的・対話的」障壁
呼吸器内科
高齢COPD患者への吸入指導は、単に手技を教えるだけでは不十分です。本研究が示すように、視力や手指の巧緻性といった「身体的制限」や、医療者との「コミュニケーション不足」がアドヒアランス低下の主因となっています。特に平均75歳を超える高齢者では、本人が言い出しにくい身体の衰えに我々が気づき、個々の能力に合ったデバイスを選択する必要があります。また、単なる処方更新にとどまらず、「吸入の効果実感」を共有する対話の積み重ねこそが、長期的な治療継続の鍵となります。明日からの外来で、患者さんの手元と表情をもう一度よく観察したくなる、示唆に富む報告です。
Barriers and Facilitators to Inhaler Adherence in Elderly Individuals with Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Qualitative Study
慢性閉塞性肺疾患を有する高齢者における吸入アドヒアランスの障壁と促進因子:定性的研究
Liu YR, Zhang W, Huang Y, Peng X, Sun K, Wu Z, Wang H, Ji X, Wang J.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2025 Nov 27;20:3827-3838.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41333602/
慢性閉塞性肺疾患を有する高齢者における吸入アドヒアランスの障壁と促進因子:定性的研究
Liu YR, Zhang W, Huang Y, Peng X, Sun K, Wu Z, Wang H, Ji X, Wang J.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2025 Nov 27;20:3827-3838.
背景: 吸入療法は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の薬物療法の中心です。高齢のCOPD患者は吸入器の使用においてより大きな課題に直面することが多く、その使用経験は治療アドヒアランスと転帰に大きく影響します。したがって、高齢COPD患者の認識と経験に基づき、吸入アドヒアランスに影響を与える障壁と促進因子を理解することが急務です。
研究デザイン: 中国の三次病院から募集した高齢COPD患者を対象に、半構造化インタビューを用いた記述的定性研究を実施しました。データはNVivo 11を用いて従来の内容分析法により解析されました。
結果: 合計20名の参加者(平均年齢75.9歳、女性35%)がインタビューを完了しました。2つのテーマと6つのサブテーマが特定されました。2つの主要テーマは「吸入アドヒアランスの促進因子」と「吸入アドヒアランスの障壁」でした。促進因子には、吸入デバイスの操作のしやすさ(知覚された管理可能性)と吸入療法のメリットの認識が含まれていました。障壁には、身体的制限(視力や巧緻性の低下)、患者と医療提供者間のコミュニケーションの課題、物忘れ、および不便な処方リフィル方針が含まれていました。
結論: 患者のニーズに合わせて吸入デバイスを適応・最適化すること、吸入療法の利点に対する患者の認識を高めること、そして患者と医療提供者の間の継続的かつ効果的なコミュニケーション経路を確立することが、高齢COPD患者の吸入アドヒアランスを改善するための有望なアプローチであると考えられます。
研究デザイン: 中国の三次病院から募集した高齢COPD患者を対象に、半構造化インタビューを用いた記述的定性研究を実施しました。データはNVivo 11を用いて従来の内容分析法により解析されました。
結果: 合計20名の参加者(平均年齢75.9歳、女性35%)がインタビューを完了しました。2つのテーマと6つのサブテーマが特定されました。2つの主要テーマは「吸入アドヒアランスの促進因子」と「吸入アドヒアランスの障壁」でした。促進因子には、吸入デバイスの操作のしやすさ(知覚された管理可能性)と吸入療法のメリットの認識が含まれていました。障壁には、身体的制限(視力や巧緻性の低下)、患者と医療提供者間のコミュニケーションの課題、物忘れ、および不便な処方リフィル方針が含まれていました。
結論: 患者のニーズに合わせて吸入デバイスを適応・最適化すること、吸入療法の利点に対する患者の認識を高めること、そして患者と医療提供者の間の継続的かつ効果的なコミュニケーション経路を確立することが、高齢COPD患者の吸入アドヒアランスを改善するための有望なアプローチであると考えられます。