注目論文:COPD実臨床におけるGOLD 2023ガイドライン遵守率とICS過剰処方の実態
呼吸器内科
GOLD 2023改訂でLABA/ICS併用療法が推奨から削除され、ICSの使用適応がより厳格化されたことは大きな転換点でした。しかし、実臨床の処方行動はすぐには変わらないのが常です。オランダからの本報告では、ガイドライン遵守率は約6割にとどまり、依然としてICSの過剰処方(Overtreatment)が約25%に見られるという結果でした。特に安定期におけるICSの中止(De-escalation)への躊躇が透けて見えます。我々臨床医は、漫然とICSを継続せず、血中好酸球数や増悪歴に基づき「本当にそのICSが必要か」を常に再評価する必要があります。
Adherence to Inhaled Medication Guidelines in Patients with COPD: Evaluating the GOLD 2023 Strategy in a Real-World Secondary Care Setting
COPD患者における吸入薬ガイドラインの遵守状況:実臨床の二次医療現場におけるGOLD 2023戦略の評価
Cuperus LJA, De Jong G, Bischoff EWMA, Van Boven JFM, Van der Palen J, Aerts JGJV, Kerstjens HAM, In't Veen JCCM.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2025 Dec 2;20:3877-3891
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41357740/
COPD患者における吸入薬ガイドラインの遵守状況:実臨床の二次医療現場におけるGOLD 2023戦略の評価
Cuperus LJA, De Jong G, Bischoff EWMA, Van Boven JFM, Van der Palen J, Aerts JGJV, Kerstjens HAM, In't Veen JCCM.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2025 Dec 2;20:3877-3891
背景: 2023年のGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)戦略では、LABA/ICS(長時間作用性β2刺激薬/吸入ステロイド)の2剤併用療法の推奨取り下げ、ICS使用の増悪患者への限定、3剤併用療法(Triple therapy)への早期移行の推奨など、吸入薬処方に関する重要な更新が行われました。本研究は、実臨床における医師のGOLD戦略遵守状況を記述し、2023年の改訂が処方パターンをどの程度変化させたかを調査することを目的としました。
研究デザイン: オランダの教育病院における実臨床コホートから2022年のデータを収集し、同一コホートを2023年に再評価しました。ガイドライン遵守状況を判断するため、各患者の治療内容をその時点での適用GOLD戦略と照合しました。また、GOLD戦略に従った治療を受けていないサブグループを特定し、ICS処方とその適応について詳細な評価を行いました。
結果: 2022年の対象患者は1318名でした。当時のGOLD戦略に沿った吸入薬治療を受けていた割合は、2022年では51.6%でしたが、2023年のGOLD戦略に照らした2023年の遵守率は57.3%でした。血中好酸球数が低い患者、増悪歴のない患者、およびGOLD重症度分類が低い患者では、2023年戦略への遵守率が低い傾向にありました。また、ICSの過剰治療(Overtreatment)が頻繁に見られました(25.4%)。
結論: COPD患者の相当数がGOLDの推奨に従った治療を受けていませんでした。推奨から逸脱する正当な理由がある場合もありますが、医師は現在の治療が患者にとって最適かどうかを検討する必要があります。ICS導入には明確な基準が存在しますが、状態が安定した後のICS管理に関するデータに基づいたエビデンスやコンセンサスは不足しています。GOLD戦略実装への障壁を特定し議論することが不可欠です。
研究デザイン: オランダの教育病院における実臨床コホートから2022年のデータを収集し、同一コホートを2023年に再評価しました。ガイドライン遵守状況を判断するため、各患者の治療内容をその時点での適用GOLD戦略と照合しました。また、GOLD戦略に従った治療を受けていないサブグループを特定し、ICS処方とその適応について詳細な評価を行いました。
結果: 2022年の対象患者は1318名でした。当時のGOLD戦略に沿った吸入薬治療を受けていた割合は、2022年では51.6%でしたが、2023年のGOLD戦略に照らした2023年の遵守率は57.3%でした。血中好酸球数が低い患者、増悪歴のない患者、およびGOLD重症度分類が低い患者では、2023年戦略への遵守率が低い傾向にありました。また、ICSの過剰治療(Overtreatment)が頻繁に見られました(25.4%)。
結論: COPD患者の相当数がGOLDの推奨に従った治療を受けていませんでした。推奨から逸脱する正当な理由がある場合もありますが、医師は現在の治療が患者にとって最適かどうかを検討する必要があります。ICS導入には明確な基準が存在しますが、状態が安定した後のICS管理に関するデータに基づいたエビデンスやコンセンサスは不足しています。GOLD戦略実装への障壁を特定し議論することが不可欠です。