注目論文:小児PCV13導入による高齢者肺炎入院の減少効果(集団免疫の実証)

呼吸器内科
「小児にワクチンを打つことが、結果として高齢者を守る」という集団免疫(Herd Immunity)の効果を、ポルトガルの国家データが如実に示しています。2015年の小児PCV13定期接種化以降、65歳以上の成人における市中肺炎入院率が有意に低下しました。人口の高齢化に伴い入院患者の絶対数は増加し、半数が80歳以上という状況ですが、人口あたりの発生率(レート)を抑制できたことは公衆衛生上極めて大きな成果です。ワクチン戦略において小児と成人の包括的な視点がいかに重要かを再認識させる貴重な報告です。
Evolution of hospitalizations of adults for Community-Acquired Pneumonia in Portugal and the impact of pediatric pneumococcal vaccination
ポルトガルにおける成人市中肺炎入院の推移と小児肺炎球菌ワクチンの影響
Froes F, Diniz A, Mergulhão P, Oliveira H, Gonçalves-Pereira J.
Pulmonology. 2025 Dec 31;31(1):2592347. (Epub 2025 Dec 1)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41324479/
背景: ポルトガルでは2015年1月に、国の予防接種プログラム(NIP)に13価結合型ワクチン(PCV13)が含まれ、小児への普遍的かつ無料の接種が開始されました。本研究は、成人市中肺炎(CAP)入院の推移を特徴づけ、小児へのワクチン接種が成人の入院に与える影響を評価することを目的としました。

研究デザイン: 2010年から2019年にかけてのポルトガル国民保健サービスにおける全成人入院のデータを後ろ向きに解析し、2000年から2009年の期間とも比較しました。公式データベースのコード化された情報を利用し、主診断名がCAPである18歳以上の全入院症例を対象としました。

結果: 研究期間中に462,910件のCAP入院があり、これは全入院の6.2%を占め、発生率は1,000人年あたり5.38件でした。入院患者の多くは男性(54%)で、平均年齢は76.7歳(中央値81歳)であり、約半数(50.2%)が80歳以上でした。2000-2009年と比較して、入院の絶対数、平均年齢、および高齢者の発生率は有意に増加していました。しかし、NIPへの小児肺炎球菌ワクチン導入後、65歳以上の個人において1,000人年あたりのCAP入院率は持続的かつ有意に減少しました。

結論: これらの知見は、小児への普遍的な肺炎球菌ワクチン接種が成人のCAP入院に対して間接的な利益をもたらすことを実証するものです。また、健康的な加齢と予防策の重要性が示唆されました。