注目論文:IPDの長期トレンド:ワクチンで発症減も「短期死亡率」は改善せず
呼吸器内科
アイスランドの高品質な疫学データを用いた長期研究です。PCV導入により侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の発症数自体は劇的に減少しましたが、重要なことは「30日死亡率が数十年にわたり改善していない」という点です。抗菌薬や集中治療の進歩にもかかわらず、一度発症してしまえば致死率は変わらないという事実は、予防(ワクチン)の絶対的な重要性を再認識させます。また、急性期を生き延びても一般人口より長期死亡率が2.6倍高いというデータは、IPD既往者に対する長期的な健康管理やフォローアップの必要性を示唆しており、呼吸器・感染症医として看過できない知見です。
Disease Trends and Mortality from Invasive Pneumococcal Disease: A Long-Term Population-Based Study 侵襲性肺炎球菌感染症の疾患傾向と死亡率:長期集団ベース研究 Bragason HT, Rögnvaldsson KG, Hernandez UB, Erlendsdóttir H, Gottfreðsson M. Clin Infect Dis. 2025 Dec 5:ciaf670
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41351192/
背景: 肺炎球菌は侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)および死亡の主要な原因です。肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)の導入により多くの国でIPDの発生率は大幅に減少しましたが、急性IPD生存者の死亡率の傾向に関する長期的な集団ベースの研究はほとんどありません。
研究デザイン: 1975年から2020年にアイスランドでIPDと診断された全症例(血液または髄液培養陽性)のデータを解析しました。30日死亡率および5年死亡率を3つの年代(1985-2014)にわたって評価し、多変量調整を行いました。さらに、IPD患者と一般集団との間で年齢調整全死亡率(ASR)を比較しました。
結果: コホートには全年齢の1,463人の患者が含まれました。IPD発生率は1995-2004年にピークに達し、その後有意に減少しました(p<.001)。血清型7Fが最も一般的でした。30日以内の短期死亡率は経時的に改善が見られませんでした(p=.98)。5年死亡率はわずかな改善が見られましたが、統計的有意差には達しませんでした(p=.076)。早期死亡を除外した場合でも、IPD患者の全死亡ASRは一般集団と比較して2.6倍高値でした(0.021対0.008人年)。
結論: IPD発生率は、特に2011年の10価PCV導入後に大幅に減少しましたが、短期死亡率は変わっていません。長期死亡率にはわずかな改善が見られましたが、IPD生存者は一般集団と比較して依然として有意に高い長期死亡リスクに直面しています。IPDに関連する短期死亡率を減少させるための標的を絞った介入が必要です。
研究デザイン: 1975年から2020年にアイスランドでIPDと診断された全症例(血液または髄液培養陽性)のデータを解析しました。30日死亡率および5年死亡率を3つの年代(1985-2014)にわたって評価し、多変量調整を行いました。さらに、IPD患者と一般集団との間で年齢調整全死亡率(ASR)を比較しました。
結果: コホートには全年齢の1,463人の患者が含まれました。IPD発生率は1995-2004年にピークに達し、その後有意に減少しました(p<.001)。血清型7Fが最も一般的でした。30日以内の短期死亡率は経時的に改善が見られませんでした(p=.98)。5年死亡率はわずかな改善が見られましたが、統計的有意差には達しませんでした(p=.076)。早期死亡を除外した場合でも、IPD患者の全死亡ASRは一般集団と比較して2.6倍高値でした(0.021対0.008人年)。
結論: IPD発生率は、特に2011年の10価PCV導入後に大幅に減少しましたが、短期死亡率は変わっていません。長期死亡率にはわずかな改善が見られましたが、IPD生存者は一般集団と比較して依然として有意に高い長期死亡リスクに直面しています。IPDに関連する短期死亡率を減少させるための標的を絞った介入が必要です。