注目論文:妊婦RSVワクチン、実臨床で乳児入院を82%抑制
呼吸器内科
RSVは乳児入院の主要因であり、小児科領域だけでなく公衆衛生上の大きな課題です。スコットランドからのこの大規模実世界データは、妊婦へのRSVワクチン接種(RSVpreF)が乳児(生後90日以内)の重症RSV肺炎による入院を約8割も抑制することを示しました。特筆すべきは早産児(37週未満)でも約90%という高い有効性が確認された点です。治験データが実臨床で見事に再現されており、母体免疫による受動免疫の強力なベネフィットを裏付けています。日本でも導入が進む中、妊婦への推奨を強く後押しする決定的なエビデンスと言えるでしょう。
Effectiveness of the maternal RSVpreF vaccine against severe disease in infants in Scotland, UK: a national, population-based case-control study and cohort analysis
英国スコットランドの乳児における重症疾患に対する妊婦RSVpreFワクチンの有効性:全国集団ベースの症例対照研究およびコホート解析
McLachlan I, Robertson C, Morrison KE, et al.
Lancet Infect Dis. 2025 Nov 28:S1473-3099(25)00624-3
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41325764/
英国スコットランドの乳児における重症疾患に対する妊婦RSVpreFワクチンの有効性:全国集団ベースの症例対照研究およびコホート解析
McLachlan I, Robertson C, Morrison KE, et al.
Lancet Infect Dis. 2025 Nov 28:S1473-3099(25)00624-3
背景: RSVは特に生後6ヶ月未満の乳児において入院の主要な原因となっています。スコットランドでは2024年8月12日に、妊娠28週から接種可能な2価RSV prefusion F(RSVpreF)ワクチンを用いた妊婦ワクチン接種プログラムを導入しました。臨床試験では高い有効性が示されていますが、政策およびプログラム提供に資するため、実世界における有効性を評価しました。
研究デザイン: スコットランドの妊娠・出産リンクデータセット(SLiPBD)を用いた後ろ向きネステッド症例対照研究(およびコホート感度分析)を実施しました。対象は2024年8月12日から2025年3月31日までの全単胎出生児です。症例(Case)は生後90日以内のRSV関連下気道感染症(LRTI)による入院とし、各症例に対し出生週と在胎週数をマッチさせた対照(Control)を1:10の割合で設定しました。分娩の14日以上前にワクチン接種を受けた場合を「接種済み」と定義し、調整条件付きロジスティック回帰を用いて入院に対するワクチン有効性(VE)を算出しました。
結果: 研究期間中に27,565例の単胎出生が記録されました。妊婦の50.2%(13,842例)がRSVpreFワクチンの接種を受け、そのうち92.1%が分娩14日以上前に接種していました。生後90日以内のRSV関連LRTI入院は354例発生しました。調整後の解析により、RSV関連LRTI入院に対するワクチン有効性は82.2%(95% CI 75.1-87.3; p<0.0001)でした。また、早産児(37週未満)においても89.9%(55.3-97.7; p=0.0025)と高い有効性が維持され、正期産児(37週以上)では81.5%でした。
結論: 妊婦へのRSVワクチン接種は、生後90日以内の乳児、特に早産児を含む集団において、RSV関連LRTI入院のリスクを大幅に低減させることが実証されました。多くのRSV関連入院を防ぐため、高い接種率を伴う母体RSVワクチン接種プログラムの世界的な拡大が推奨されます。
研究デザイン: スコットランドの妊娠・出産リンクデータセット(SLiPBD)を用いた後ろ向きネステッド症例対照研究(およびコホート感度分析)を実施しました。対象は2024年8月12日から2025年3月31日までの全単胎出生児です。症例(Case)は生後90日以内のRSV関連下気道感染症(LRTI)による入院とし、各症例に対し出生週と在胎週数をマッチさせた対照(Control)を1:10の割合で設定しました。分娩の14日以上前にワクチン接種を受けた場合を「接種済み」と定義し、調整条件付きロジスティック回帰を用いて入院に対するワクチン有効性(VE)を算出しました。
結果: 研究期間中に27,565例の単胎出生が記録されました。妊婦の50.2%(13,842例)がRSVpreFワクチンの接種を受け、そのうち92.1%が分娩14日以上前に接種していました。生後90日以内のRSV関連LRTI入院は354例発生しました。調整後の解析により、RSV関連LRTI入院に対するワクチン有効性は82.2%(95% CI 75.1-87.3; p<0.0001)でした。また、早産児(37週未満)においても89.9%(55.3-97.7; p=0.0025)と高い有効性が維持され、正期産児(37週以上)では81.5%でした。
結論: 妊婦へのRSVワクチン接種は、生後90日以内の乳児、特に早産児を含む集団において、RSV関連LRTI入院のリスクを大幅に低減させることが実証されました。多くのRSV関連入院を防ぐため、高い接種率を伴う母体RSVワクチン接種プログラムの世界的な拡大が推奨されます。