注目論文:トリプル療法(LAMA/LABA/ICS)の心血管安全性:台湾全土コホート研究
呼吸器内科
COPD治療において、トリプル療法(LAMA/LABA/ICS)は増悪抑制や予後改善のエビデンスが確立されつつありますが、LAMA追加による心血管イベントリスクへの懸念は完全には払拭されていませんでした。本研究は台湾のデータベースを用いた大規模観察研究で、LABA/ICSと比較してトリプル療法(合剤)が心血管イベントによる入院リスクを増加させないことを示しました。特に心血管疾患の既往があるハイリスク群や、1年以上の長期使用でもリスク上昇が見られなかった点は、実臨床においてトリプル療法を選択する際の安心材料となる重要なデータです。
Risk of Hospitalized Cardiovascular Events Associated with LAMA/LABA/ICS FDC versus LABA/ICS FDC in Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Nationwide Cohort Study.
慢性閉塞性肺疾患患者におけるLAMA/LABA/ICS合剤とLABA/ICS合剤に関連する入院を要する心血管イベントのリスク:全国コホート研究
Sun SH, Lu MJ, Chen CY, Tsai NH, Pan SW, Dong YH.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2025 Nov 20;20:3765-3777
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41293130/
慢性閉塞性肺疾患患者におけるLAMA/LABA/ICS合剤とLABA/ICS合剤に関連する入院を要する心血管イベントのリスク:全国コホート研究
Sun SH, Lu MJ, Chen CY, Tsai NH, Pan SW, Dong YH.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2025 Nov 20;20:3765-3777
背景: 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、長時間作用性抗コリン薬、長時間作用性β2刺激薬、および吸入ステロイドの3剤吸入療法(LAMA/LABA/ICS)は、LABA/ICSと比較して心血管リスクが高い可能性が臨床試験データで示唆されていましたが、結果は相反しており、日常診療環境からのエビデンスは乏しい状況でした。本研究は、単一吸入器による固定用量配合剤(FDC)を対象として、LAMA/LABA/ICSとLABA/ICSの心血管安全性を評価することを目的としました。
研究デザイン: 台湾の全国データベースを用いたコホート研究です。2019年1月1日から2022年12月31日の間にLAMA/LABA/ICS FDCまたはLABA/ICS FDCの処方を受けたCOPD患者を対象としました。可変比傾向スコア(PS)マッチングを用いたCox回帰モデルを適用し、急性心筋梗塞、不安定狭心症、虚血性脳卒中、心不全、心不整脈を含む入院を要する心血管イベントを治療群間で比較しました。
結果: PSマッチングコホートには合計28,851人の患者(LAMA/LABA/ICS FDC群 5,836人、LABA/ICS FDC群 23,015人)が含まれました。LABA/ICS FDCと比較したLAMA/LABA/ICS FDCの複合心血管イベントのハザード比(HR)は1.00(95%信頼区間 [CI], 0.78-1.28)であり、個々の転帰についても結果に実質的な変化はありませんでした。また、心血管イベントによる入院歴がある患者(HR, 0.86)、COPD増悪による入院歴がある患者(HR, 0.93)、1年以上の治療を受けている患者(HR, 0.76)においても、LAMA/LABA/ICS FDCに関連するリスク増加は認められませんでした。
結論: この台湾のコホート研究では、COPD患者において、LAMA/LABA/ICS FDCはLABA/ICS FDCと比較して、高リスクのサブグループであっても、様々な心血管転帰のリスクが高いという結果は見出されませんでした。
研究デザイン: 台湾の全国データベースを用いたコホート研究です。2019年1月1日から2022年12月31日の間にLAMA/LABA/ICS FDCまたはLABA/ICS FDCの処方を受けたCOPD患者を対象としました。可変比傾向スコア(PS)マッチングを用いたCox回帰モデルを適用し、急性心筋梗塞、不安定狭心症、虚血性脳卒中、心不全、心不整脈を含む入院を要する心血管イベントを治療群間で比較しました。
結果: PSマッチングコホートには合計28,851人の患者(LAMA/LABA/ICS FDC群 5,836人、LABA/ICS FDC群 23,015人)が含まれました。LABA/ICS FDCと比較したLAMA/LABA/ICS FDCの複合心血管イベントのハザード比(HR)は1.00(95%信頼区間 [CI], 0.78-1.28)であり、個々の転帰についても結果に実質的な変化はありませんでした。また、心血管イベントによる入院歴がある患者(HR, 0.86)、COPD増悪による入院歴がある患者(HR, 0.93)、1年以上の治療を受けている患者(HR, 0.76)においても、LAMA/LABA/ICS FDCに関連するリスク増加は認められませんでした。
結論: この台湾のコホート研究では、COPD患者において、LAMA/LABA/ICS FDCはLABA/ICS FDCと比較して、高リスクのサブグループであっても、様々な心血管転帰のリスクが高いという結果は見出されませんでした。