注目論文:テゼペルマブの季節を問わない増悪抑制効果(NAVIGATOR事後解析)

呼吸器内科
喘息診療において「特定の季節に悪化する」患者さんは少なくありません。ウイルス流行期の冬や花粉飛散期の春・秋など、トリガーは多岐にわたり管理に難渋します。本研究はNAVIGATOR試験の事後解析で、テゼペルマブが季節や季節性アレルギーの有無に関わらず、一貫して約50-60%の増悪抑制効果を示したことを報告しています。これは、アレルゲン曝露やウイルス感染など多様な刺激によって上皮細胞から産生される上流サイトカイン「TSLP」を阻害するという薬剤の作用機序と合致する結果です。季節性の変動に悩む重症喘息患者さんに対し、通年投与による安定化を期待させる重要なデータと言えます。
Tezepelumab reduces exacerbations across all seasons in patients with severe, uncontrolled asthma (NAVIGATOR)
テゼペルマブは重症非コントロール喘息患者において全季節を通じて増悪を減少させる(NAVIGATOR)
Pavord ID, Hoyte FCL, Lindsley AW, Ambrose CS, Spahn JD, Roseti SL, Cook B, Griffiths JM, Hellqvist Å, Martin N, Llanos JP, Martin N, Colice G, Corren J.
Ann Allergy Asthma Immunol. 2023 Nov;131(5):587-597.e3
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37619779/
背景: 喘息増悪の頻度は、季節的なトリガーにより年間を通じて変動します。テゼペルマブは胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)を標的とするヒトモノクローナル抗体です。第3相NAVIGATOR試験において、テゼペルマブは重症非コントロール喘息患者の年間喘息増悪率(AAER)をプラセボと比較して有意に減少させました。

研究デザイン: NAVIGATOR試験は多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験です。患者(12~80歳)はテゼペルマブ210mgまたはプラセボを4週間ごとに52週間皮下投与する群に1:1で割り付けられました。本研究では、52週間にわたるAAERを季節ごとに評価する事後解析を行いました。南半球の患者データは北半球の季節に合わせて変換されました。

結果: テゼペルマブはプラセボと比較して、冬に63%(95% CI, 52-72)、春に46%(26-61)、夏に62%(48-73)、秋に54%(41-64)AAERを減少させました。気候をマッチさせた解析において、春のアレルギーシーズン(3月1日~6月15日)およびブタクサ花粉シーズン(9月)において、テゼペルマブは季節性アレルギーを有する患者のAAERをそれぞれ59%(29-77)および70%(33-87)減少させました。通年性アレルギー患者および季節性アレルギー患者のいずれにおいても、全季節を通じて増悪抑制効果が認められました。

結論: テゼペルマブは、季節性および通年性アレルギーを有する患者を含む重症非コントロール喘息患者において、プラセボと比較して全季節を通じて増悪を減少させました。これらのデータは、広範な重症非コントロール喘息患者集団におけるテゼペルマブの有効性をさらに支持するものです。