注目論文:気管支拡張症における「上気道」マイクロバイオームの臨床的意義
呼吸器内科
「One Airway, One Disease」の概念を強く支持する、AJRCCMからの重要な報告です。気管支拡張症診療において副鼻腔炎のケアが重要であることは経験的に知られていますが、本研究は上気道(鼻咽頭)のマイクロバイオーム、特に緑膿菌の存在が、下気道の重症度や増悪リスクと密接に相関することを示しました。喀痰が出にくい患者さんでも、上気道の評価が下気道のリスク層別化に役立つ可能性を示唆しており、呼吸器内科医としても鼻の病変をより積極的に評価・介入する必要性を再認識させられます。
Upper-Airway Microbiome, Mucociliary Function, and Clinical Outcomes in Bronchiectasis: Data from the EMBARC-BRIDGE Study
気管支拡張症における上気道マイクロバイオーム、粘液線毛機能、および臨床転帰:EMBARC-BRIDGE研究からのデータ
Choi H, Richardson H, Hennayake C, et al.
Am J Respir Crit Care Med. 2025 Dec;211(12):2296-2306.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40938736/
気管支拡張症における上気道マイクロバイオーム、粘液線毛機能、および臨床転帰:EMBARC-BRIDGE研究からのデータ
Choi H, Richardson H, Hennayake C, et al.
Am J Respir Crit Care Med. 2025 Dec;211(12):2296-2306.
背景: 感染は気管支拡張症の主要な疾患ドライバーであり、上気道マイクロバイオームが下気道マイクロバイオームを形成することが知られています。本研究は、気管支拡張症における上気道マイクロバイオーム、粘液線毛機能、および臨床転帰の関係を評価することを目的としました。
研究デザイン: 欧州5施設の気管支拡張症患者344名から鼻咽頭スワブを採取しました(うち104名は1年後の追跡時も採取)。マイクロバイオーム組成をBronchiectasis Severity Index(BSI)および重度増悪と比較評価しました。α多様性およびβ多様性を解析し、Dysbiosis(ディスバイオシス:細菌叢の乱れ)は、病原性分類群(緑膿菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌)の相対存在量が10%を超えることと定義しました。
結果: 344名中200名(58.1%)が女性でした(年齢中央値68歳)。α多様性は疾患重症度に応じて有意に異なり(P=0.002)、β多様性解析では重症度および重度増悪に関連する特有のマイクロバイオームプロファイルが明らかになりました。ランダムフォレスト解析により、緑膿菌(Pseudomonas)が重症気管支拡張症(BSI≧9)および重度増悪と関連していることが特定されました。属レベルでの緑膿菌の相対存在量は、喀痰培養における緑膿菌(P. aeruginosa)の発育と良好に相関していました。鼻咽頭のDysbiosisを有する患者は、呼吸器症状がより重篤で、鼻上皮生検にて上皮の破壊を認め、非Dysbiosis群と比較して1年間の追跡期間中により多くの重度増悪を経験しました。
結論: 上気道マイクロバイオームは、気管支拡張症の重症度および重度増悪と関連しており、上気道の評価が疾患管理において重要であることが示唆されました。
研究デザイン: 欧州5施設の気管支拡張症患者344名から鼻咽頭スワブを採取しました(うち104名は1年後の追跡時も採取)。マイクロバイオーム組成をBronchiectasis Severity Index(BSI)および重度増悪と比較評価しました。α多様性およびβ多様性を解析し、Dysbiosis(ディスバイオシス:細菌叢の乱れ)は、病原性分類群(緑膿菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌)の相対存在量が10%を超えることと定義しました。
結果: 344名中200名(58.1%)が女性でした(年齢中央値68歳)。α多様性は疾患重症度に応じて有意に異なり(P=0.002)、β多様性解析では重症度および重度増悪に関連する特有のマイクロバイオームプロファイルが明らかになりました。ランダムフォレスト解析により、緑膿菌(Pseudomonas)が重症気管支拡張症(BSI≧9)および重度増悪と関連していることが特定されました。属レベルでの緑膿菌の相対存在量は、喀痰培養における緑膿菌(P. aeruginosa)の発育と良好に相関していました。鼻咽頭のDysbiosisを有する患者は、呼吸器症状がより重篤で、鼻上皮生検にて上皮の破壊を認め、非Dysbiosis群と比較して1年間の追跡期間中により多くの重度増悪を経験しました。
結論: 上気道マイクロバイオームは、気管支拡張症の重症度および重度増悪と関連しており、上気道の評価が疾患管理において重要であることが示唆されました。