注目論文:HIV関連ニューモシスチス肺炎におけるIL-6の予後予測能

呼吸器内科
HIV合併ニューモシスチス肺炎(PCP)の重症度判定には、一般的に酸素化指標(A-aDO2)やLDH、β-D-グルカンなどが用いられますが、本研究では血漿IL-6値がそれらを上回る強力な予後予測因子である可能性が示されました。特にROC曲線のAUCが0.883と、CD4数(0.789)やLDH(0.703)と比較して高い予測精度を示した点は注目に値します。免疫チェックポイント阻害薬の使用から、IL-6測定へのアクセスは以前より良くはなっていますが、多くの施設でルーチン検査とは言い難いのが現状です。しかし、ART未導入のハイリスク症例において、早期に厳重な管理が必要な患者を選別する上で、従来のマーカーに加えた炎症性サイトカイン評価が有用である可能性を示唆する重要なデータです。
Plasma IL-6 level predict the risk of in-hospital mortality in HIV-associated pneumocystis pneumonia 血漿IL-6レベルはHIV関連ニューモシスチス肺炎における院内死亡リスクを予測する Xia H, Song J, Hu Y, Li L, Gao L, Ma P. BMC Infect Dis. 2025 Nov 22.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41275125/
背景: 本研究は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者でニューモシスチス肺炎(PCP)と診断された患者において、院内死亡を予測しうる血漿免疫炎症性バイオマーカーを同定することを目的としました。

研究デザイン: 抗レトロウイルス療法(ART)未治療のHIV感染PCP患者125名を前向きに登録しました。臨床変数および入院時に測定した8つの事前に選択された血漿炎症性サイトカイン(IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、IL-12、IL-17、TNF-α、IFN-β)を評価しました。多変量ロジスティック回帰分析を用いて院内死亡と実質的に関連する因子を特定し、ROC曲線を用いて院内死亡に対するバイオマーカーの予測能を判定しました。

結果: 院内死亡率は12.8%(16/125)でした。生存したAIDS合併PCP患者と比較して、死亡群ではCRP、IL-6、AST、LDHが実質的に高く、アルブミン(ALB)、PO2、CD4数が低い値を示しました。多変量ロジスティック回帰分析では、IL-6レベルの上昇と院内死亡との間に有意な関連が認められました(20 pg/mL上昇ごとの調整オッズ比 1.127; 95% CI 1.047-1.230; p = 0.004)。血漿IL-6レベルは、CD4陽性T細胞(AUC 0.789)、ALB(AUC 0.776)、LDH(AUC 0.703)と比較して、最も高い曲線下面積(AUC 0.883; 95% CI 0.812-0.953)を示しました。

結論: 入院時の血漿IL-6レベルの上昇は、HIV感染PCP患者における院内死亡リスクの増加と有意に関連していました。